寝耳に水!? 廃止渦中の「夕張支線」へ行ってみた
鉄道 企業動向
これに続いて廃止が打ち出されているのが、石勝線新夕張~夕張間のいわゆる「夕張支線」だ。JR北海道が発表している2014年度の線区別収支状況によると、夕張支線は管理費を除いても営業係数が1247(100円を稼ぐのに1247円かかる)。これは、留萌本線留萌~増毛間の4161、札沼線(学園都市線)北海道医療大学~新十津川間の1909に続いて3番目に悪い数字だ。
このため、JR北海道は輸送密度(1日1kmあたりの平均輸送量)が500未満となっている、これら3区間を含む8区間を廃止したい意向を示しており、このことを察知した鈴木直道夕張市長は8月8日、JR北海道本社を訪れ、代替公共交通機関整備の協力、JRが所有する施設の譲渡、JR社員の夕張市への派遣を条件に、夕張支線の廃止を提案したという。これを受けたJR北海道は8月17日、夕張市長の提案を受け入れ、正式に廃止の申入れを行った。
夕張支線の廃止は、鈴木市長が「攻めの廃線」という考えから独断に近い形で申し入れたため、この報道が流れた途端、市民の間に少なからず動揺が広がったという。まさに「寝耳に水」と言ったところだろうか。
夕張支線は、もともと追分~紅葉山(現・新夕張)~夕張間の国鉄夕張線で、夕張市内に点在する各炭鉱から産出される石炭を輸送する目的で1892年に開業。1981年に千歳空港(現・南千歳)~新得間の石勝線が開業すると、追分~紅葉山間が同線に編入された。本線から外れた紅葉山~夕張間は、本来ならそのまま夕張線を名乗るはずだったが、このような経緯から同じく石勝線とされた。そのおかげで、国鉄再建法に基づく特定地方交通線に指定されることなく、JR北海道発足後も存続し現在に至っている。
かつて夕張市内には夕張支線を軸に、紅葉山と登川を結ぶ国鉄夕張線登川支線、野幌(江別市)と夕張本町を結ぶ夕張鉄道、清水沢と大夕張炭山を結ぶ三菱石炭鉱業(三菱大夕張鉄道)といった一般旅客営業も行う鉄道があり、沼ノ沢と真谷地間を結んでいた専用鉄道も一時旅客営業を行っていた。夕張支線が廃止されれば、夕張市内の鉄道は石勝線の「本線」を残すのみとなり、実質的に地域の足から鉄道が姿を消すことになる。
廃止は早くて2019年3月末という見方が有力だが、それまではまだ2年半ある。その間、夕張市とJR北海道がどのように夕張の新たな交通体系を提案するのかは興味深いところだが、その前に夕張支線の現況を改めてこの目で見ておくことにした。
現在、夕張支線の運行本数は上下各5本。今年3月のダイヤ改正では上下各4本が減便された。札幌から夕張支線へアクセスする場合、千歳を10時38分に発車する2629Dが便利だ。その1本前の列車は追分を7時8分に発車する2623Dだから、札幌から乗り継ぐのは不可能。夕張市内に前泊しない限り、否が応でも2629Dを利用せざるを得ない。そんなわけで、筆者が乗車した時は、平日にも関わらず廃止報道を聞きつけたマニアたちで賑わっていた。
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