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触媒を使い、薬の合成コストを安価にする方法の開発〜アミンという構造の制御〜

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日本では処方箋薬は1〜3割負担。ということは本来はいくら払っているのでしょう。あれ?意外と薬って高い!そんな薬の価格を下げれるかもしれない方法が開発されました。

Amine:アミン

みなさんはアミンという言葉をご存知だろうか?

アンモニア(NH3)は、窒素原子(N)に水素原子(H)が三つ直接繋がった構造をしている。

その水素原子を炭素(C)に変えることで、アンモニアはアミンと呼ばれる物質になる。

一つ変えると第一級アミン、二つ変えると第二級アミン、三つ全て変えると第三級アミンと呼ばれる。

つまりアミンはこのような構造をもつ物質の総称なのである。

このアミンは薬を作るのによく使われる構造であり、例えば統合失調症やうつ病に使われるエビリファイ、血中のコレステロールを減らすクレストール、白血病やガンの治療薬であるグリベック、局所麻酔薬のリドカインなどは全てこのアミンを含んでいる(リンク先はそれぞれWikipedia)。

複雑なアミンをいかに安く作るか?

スイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究チームは、このアミンの合成を安く、そして簡単に大量合成できる方法を開発した。

上述したアミンの中でも特に医薬品化学で使われるのは、アミンが環状になった構造でヘテロサイクリックアミンである。

ヘテロは複数の原子が混ざっている状態をサイクリックは環状を意味する。

このような構造はまず環状になっていないアミン(ニトロアレンと呼ばれる)を用意し、それを化学反応で結合させ合成する。

これまでの合成では、アニリンという物質を作ってから、環状構造を合成していたが、研究チームが開発した方法は、そのアニリンの合成ステップを飛ばせるという。

メリットとは?

研究チームは簡単な鉄触媒を用い、ニトロアレンを直接他の有機化合物と結合させる方法を開発した。

この手法は様々な物質に利用でき、これまでの合成方法に組み入れることができるため、広い応用範囲が期待されているという。

またニトロアレン自体はアニリンよりも安く、またニトロアレンからの合成ステップも簡略化できるため、合成コストは安くできる可能性がある。

さらにこれまでアニリンからでは合成が困難だった構造に関しても、ニトロアレンからであれば合成が容易なものもある。

様々な薬に使われているアミン。

その新しい合成方法が開発されることにより、また新しい薬が開発されるかもしれない。

現在の薬はより複雑な構造をしていますが、ほとんどは何か基になる構造があり、そこから化学反応で切ったり貼ったりして作られています。薬が高い原因は、その原料が高い、合成コストが高い、特殊な薬では売れる量が少ないので利益が少ないなど様々な要因があります。そのなかでも薬が複雑になればなるほど難しくなるのが、その合成。合成コストが現在どれくらいか分かりませんが、価格の中でも結構な割合を占めていることでしょう。今回の研究では、原料コスト、合成コストを下げれる可能性があり、最終的なコストが下がれば、個人の財布も嬉しいですし、国の財政を圧迫している医療費の削減にもつながるかもしれませんね。

元記事はこちら(A new method cuts the cost of drug-building chemicals)

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