TOSS(教育技術法則化運動)という団体がある。教育の仕事に就いていない多くの人は知らないと思うが、我々小学校教師は割と知っている。EM菌や水伝を広めたのはこの団体である。
●TOSS
TOSSは、効果的な教育技術を研究して集積し、広める団体である。小学校の学級運営や教科指導に関する指導法が多い。
大きな書店の教育書コーナーにいけば、TOSSから出版された教育書が幅を効かせているのが分かるはずである。
無料で授業法を閲覧できるTOSSのサイトもある。実際のところ、多くの若手小学校教師はこれを参考にしている。
TOSSの指導法を採用している教師は、その授業や板書を見ればわかる。廊下に並べられている図工の作品を見てもわかることもあれば、授業でなくても教室の様子を見てもわかったりする。
TOSSにどっぷり浸かっている教師がたまにいて、授業法に関するセミナーのチラシをもらったりもする。
●発足者 向山洋一
ところでTOSSは、四・五十年前に、向山洋一という小学校教師を中心として発足した小さな教育サークルが徐々に拡大したものである。向山氏は現在TOSSのトップにいる。
我々小学校教師であれば、向山洋一と聞けば少なくとも名前なら知っているというくらいに有名である。しかしメディアには出てこないので、やはりほとんどの人は知らないと思う。
ちなみに学級崩壊やモンスターペアレントなどの言葉を考案した教師である。また、向山氏曰く、学級便りを最初に始めたのは自分であるそうである。
そんなわけで、知る人ぞ知る有名人である。書店では、TOSSの書籍と並んで向山洋一の書籍も多い。
TOSSでは、向山氏が考案した授業の進め方を「向山式算数」や「向山式社会」のように呼んでいる。実際に向山式○○を授業で実践している教師は多いはずである。
向山式に限らず、TOSSの中でもネームバリューのある教師のやり方は△△式と言われたりして、国内中に広まる。
(まあ、TOSSでなくても良い授業法は国内中の教師に広まっていくのはあたりまえなのだが)
みなさんが子どものときに受けてきた授業の中にも向山式があったかもしれない。
そんなわけで、お分かりかと思うが、いろいろな向山式授業法と共に広まっていったのがEMである。
しかも、数ある向山実践の中でも、重要な実践の一つであると位置づけられている。向山洋一著による、EMに絞った書籍も出ている。
であるから爆発的に日本中の教師に拡散し、いたるところでEMを使った授業が行われてるようになったという現状に至る。
(よく知られる水伝はたぶん向山ではないがTOSSの誰かである)
●科学リテラシーの欠如
このような疑似科学が授業に採用されて続けてきたのは、教師の側のリテラシーが欠如していたからであると言わざるを得ない。