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トルコ・ロシア、関係正常化で合意 首脳会談

2016/8/10 1:08
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 【サンクトペテルブルク=佐野彰洋】トルコのエルドアン大統領は9日、ロシアを訪れ同国のプーチン大統領と昨年11月のトルコによるロシア軍機撃墜事件後初めて会談した。両首脳は事件で悪化した2国間関係の正常化で合意した。プーチン氏は事件後に発動した対トルコ経済制裁を段階的に解除する考えを示した。エルドアン氏には今回の訪問を通じ、トルコで起きたクーデター未遂事件への対応を巡って同国批判を強める欧米諸国を揺さぶる狙いもある。

 「ロシアとの経済的、政治的関係を深める決定がなされた」。ロシア西部サンクトペテルブルクでの会談後、共同記者会見に臨んだエルドアン氏は対ロ関係の仕切り直しと今後の関係深化を強調した。

 プーチン氏は「2国間の優先事項は関係を事件前の水準に戻すことだ」と強調。トルコ産農産品の禁輸措置やトルコ企業の活動制限などの制裁措置は「段階的に解除していく」と語った。

 トルコでは7月15日、軍の一部によるクーデター未遂事件が起きた。エルドアン政権は鎮圧後に非常事態を宣言し、事件の黒幕と断定した米在住イスラム教指導者ギュレン師支持とされる勢力の大規模な拘束や解任、メディア閉鎖に乗り出した。

 北大西洋条約機構(NATO)同盟国である米国やドイツなどはエルドアン政権の一段の強権化を警戒。「法の支配」の尊重を求めている。

 エルドアン氏はウクライナ問題などで欧米と対立するロシアを事件後初の外遊先に選んだ。対ロ関係を欧米外交のテコとして活用したい考えがにじむ。

 最大の輸出市場である欧州連合(EU)諸国との全面対立は望まないものの、対トルコ批判の封じ込めやEUに渡航するトルコ国民の査証(ビザ)免除問題での譲歩引き出しを狙う。米国に対しては、ギュレン師送還要求の圧力とする思惑ものぞく。

 今回の首脳会談はプーチン氏が関係改善の条件としてきた撃墜「謝罪」の書簡をエルドアン氏が6月に送ったことで実現した。

 背景には約900キロメートルにわたって国境を接するシリア情勢も大きく影響している。トルコはアサド政権の退陣を求める姿勢を表向きは維持しているが、ロシアの後ろ盾を得た同政権の優位が固まりつつある。

 内戦終結の道筋について記者会見で問われたプーチン氏は「トルコとの間で相違点を抱えているが、解決は可能だ」と発言。間接的な表現でエルドアン氏に現状の追認を迫った。そのうえで首脳会談を延長し、シリア問題に限って協議することも明らかにした。

 シリア北部のトルコ国境沿いではクルド人勢力が支配地域を広げた。国境を挟んでトルコ国内に暮らすクルド人の分離・独立機運が高まりかねず、安全保障上の最大の脅威となっている。

 首脳会談ではクルド人勢力の抑え込みでプーチン氏に協力を求めた可能性がある。

 ロシア勢がトルコで手掛ける原発建設工事の再開も確認した。トルコ側は投資優遇策を適用する。ロシア産天然ガスをトルコ経由で欧州に輸出するパイプライン「トルコストリーム」構想を巡っては、エルドアン氏は「速やかに実現させる」と述べた。

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