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考えたこと、感じたこと

おとなの教養 私たちはどこから来て、どこに行くのか? 池上彰 感想

先日読んだ池上さんの本に下記の本が出てきたので読み直してきました。軽めの新書なので内容を覚えてはいるのですが、どうもアウトプットしにくい。そこで感想を書いてみようかなと。引用部分は、私の要約ですので、ご注意を。

 

「おとなの教養―私たちはどこから来て、どこに行くのか?」池上彰 NHK出版新書

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さて、この記事の読者様は、リベラルアーツという言葉をご存知ですか。もしご存知でなくても一般教養科目という名前にしたら、聞いたことあるでしょうか。大学では、文系・理系と区別して入試が行われ、入学後も基本的にはそれに準じて一般教養科目を学びます。

本書は、こうした「教養」について、もう少し具体的に、どのようなモノなのか、そしてどう学べばいいのかという方向性を指し示す本です。

 

こうした大学の制度は長く日本の高等教育を担っていた。しかし、文理の分離という大学の制度やカリキュラムについてその弊害が指摘されるようになる。

例えば、原発事故の報道では、突然ベクレルシーベルトという単位が出てきて、視聴者は訳も分からず、不安だけが募る。テレビのアナウンサーや出演者も、学者や専門家以外は詳しく理解していなくてコメントできずに終わってしまう。文系の学生にも理系の知識の素養があればこういうことは起こりにくい。

他にも、1995年地下鉄サリン事件。高学歴で優秀だとされた理系のエリートたちが、ヨガや神秘体験をきっかけに、事件に加担してしまう。これは宗教に関する教養が足りなかったせいだと考えられる。

 と池上(敬称略)は指摘します。

 

本書は、こうした問題意識から、教養に焦点を当て解説します。

そもそも教養とは何なのか。古くは、文法、修辞学、論理学、算術、幾何学天文学、音楽の7科目を指したそうです。池上は、現代の教養7科目として、宗教、宇宙、人類の旅路、人間と病気、経済学、歴史、日本と日本人を挙げます。

 

例えば、第1章の宗教では、

現代では、科学が発展して、天気や自然災害を科学的な見地から説明したり予測したりすることができるが、古代の人々は、それらに宗教的ストーリーを作ることで説明しようとした。

宗教が生まれた土地の自然環境によって、その教義が影響を受けていると考えられる。ユダヤ教イスラム教キリスト教は、そうした厳しい自然の中で生きるためには、神の怒りに触れたら大変だという考えが元にある。一方で、豊かな南アジアでは、熱帯なので、たくさん生き物が生まれ、死んではまた生まれていく「輪廻転生」という考えが説得力を持つ。また、日本では自然が豊かなので、その自然それぞれに神が宿るという考え方が支持された。

人間の理解を超える超自然的な力に対する畏怖が、宗教なのである。

宗教の内部からの視点ではなくて、外部からの視点で説明しようとします。いかにも知的エリートのような方法論ですが、「神」を否定しているわけではなくて、「こういう風に神という存在を理解することもできるよ」と相対化して説明してくれるのです。

 

他にも、6章では歴史を学ぶことについて説明しています。

日本に限らず歴史というものは、歴史の勝者からの視点に基づいて記述されている(注:勝利史観と呼ばれる)。常に人間は進歩しているという視点「進歩史観」がある。

など、歴史を読み解くときの注意点を示唆しています。

最近ですと憲法改正と共に「戦後レジームへの脱却」という言葉を耳にしますけれども、二次大戦の結果について今でも東京裁判への不満が述べられるというのは、その勝利史観への不満の表れでしょうね。

 

幅広く、かるーく書いてあるので、スラスラ読めてしまいますが、本書に書いてあることは、全部知っていたいようなことばかりです。が、こうしてうまくまとめられているのは、著者の記者としての経歴ゆえでしょう。そして、これから教養をつけたいと考えている人にとってはよい入門書(というより初歩)の一冊になりえると思います。

ただし、わかりやすく記述してあるためか、論理がゆるいところがあります(入門書にありがちなので、しょうがないといえばそこまでです)。本書を基本に次の一冊を探すための本と、私は考えます。

 

最後に、買ってまで購入すべきかについて。基本的に時事ネタの多い池上さんの本ではありますが、これから勉強したいとか、中学・高校生が勉強の意義を知りたいとか、大人が勉強の意義をご子息にお伝えしたいとかそういう目的があれば、購入してもすべきです。

暇潰しとして読みたいという動機でしたら図書館から借りたほうが倹約できますね。