アジアのファッションキャピタルを目指して
近年パリの合同展を取材していて、特に感じるのがアジア人デザイナーのレベルが上がってきている点だ。以前なら、「やっぱり民俗調が強過ぎて、日本じゃ無理だよな」とピックアップを諦めるものが多かったが、最近はロンドンの学校に留学し、そのままロンドンに残って活動しているデザイナーが数多く出展してきており、十分ピックアップするに耐えるレベルに至っている。こうした人々は、母国でも恐らくは裕福な階層の出身で、母国の生産背景も活用しながら、卒後すぐにブランドを立ち上げていたりとスピーディーだ。大手セレクトショップでも買い付けており、どんどん出てくる気がする。
こうした欧米マーケットへの参入も喧しいが、一方で5~9サイズを用意しないとならない欧米市場よりも、体型的に差異の少ないアジアでの展開の方が効率面で良いという考え方もある。その時にプレゼンテーションする場として一番相応しい場所はどこなのか。アジアから誘致する視点で、東京のファッションウィークを考えてみても良いのではなかろうか。香港やシンガポールに負けないアジアのハブを目指すということだ。サイズを考えたら、手っ取り早く、東京で発表して、アジアに売るというイメージを作れないものだろうか。そして世界で売る時には、「どうぞサイズ展開を広げて、パリなりニューヨークなりへ行ってください」と。
今回はベトナムとインドネシアからの「アジアンファッション・ミーツ・東京(Asian Fashion Meets TOKYO)」と題した招待参加があった。
ベトナムの「グェン・ツォン・トリ(Nguyen Cong Tri)」は、編み込みやプリーツなど細かい手仕事が強みだと感じられた。丈感や分量感、シルエットやアイテムをその国のマーケットに合わせてアジャストしていけば、十分に戦えると思う。
インドネシアの「ノルマ・モイ(Norma Moi)」は手織り、ジャカード、プリーツなどで丁寧な物作りが伝わってくる。宗教色を省けば、ベトナム同様、市場への受け入れも可能だろう。
>>Asian Fashion Meets TOKYO 2016-17年秋冬コレクション
ロンドンベースの台湾デザイナー、「ヨハン・クー ゴールドレーベル(Johan Ku Gold Label)」は既に東京の常連だ。端切れを叩いた生地は、いつも通りこのブランドのアイコニックな部分だ。それを白のシリーズでも表現して、なおかつそこに暗がりで蛍光色に光る蓄光素材で捻りを効かせた。毎回出てきてくれるのは嬉しいことだ。
>>Johan Ku Gold Label 2016-17年秋冬コレクション
海外からの参加という点では、「DHLアワード」の招待で東京を選んだデンマークの「アンソフィーマドセン(Anne Sofie Madsen)」の存在も嬉しい限りだ。メンズテーラード素材のフリル使いとシフォンのフリルの組み合わせが斬新だった。
>>Anne Sofie Madsen 2016-17年秋冬コレクション
アジアを始めとして、海外からの誘致を行政・団体・スポンサーレベルの支援も得つつ、広げていく事で、そのデザイナーたちが母国に帰って、東京のファッションウィークを喧伝するアンバサダーとなってくれるに違いない。根気よく続けることで、2020年を目標に東京のファッションウィークをアジアのファッションキャピタルに押し上げようではないか。
【「ジュルナル・クボッチ」編集長久保雅裕の東コレコラム】
・イレギュラーがあるから面白い
・既視感との戦い
・ファッションは、アートともっと交流すべき
・「和」が出ているかを探して
久保雅裕