連載
SE稼業は忘己利他(もうこりた)─現場に転がる箴言集
ソフトウェア開発会社での開発工程は「見積もり」に始まり,「総合テスト」を経て,製品として導入されていきます。これら一連の工程で業務品質の重要な鍵を握っているのは「コミュニケーション力」です。すなわち「要求仕様」を確定させる際には,開発チームと顧客との間に密接なコミュニケーションが必要となり,「設計」「製造」「内部テスト」では開発チーム内の目的・目標の認識がコミュニケーションによって共有化される必要があります。さらに,「総合テスト」では再び顧客と開発チームのコミュニケーションが必要とされます。
要求仕様の早期凍結は見積もりと並んでプロジェクトの成否を決定する重要な工程です。昨今の厳しい経済環境の中にあって,顧客も開発会社も利をあせり,時間をあせった結果,多くのプロジェクトでは,その開発内容に見合わないような不条理な納期が設定されています。達成不可能な開発納期および二転三転する要求仕様は開発チームの目標設定および達成の意欲を失わせ,主要な開発工程である設計・製造・テストは常にあせりの気分に覆われ,開発者における冷静かつ合理的な判断力を失わせてしまいます。
このようなプロジェクトでは,個々の開発者を有機的に統合するマネジメントが行われることもなく,初期の単体・結合テストの時点からプロジェクトは混乱の状態に陥ることになります。さらに,チームプレーは分断され開発者たちはバラバラな状態のまま時間切れということで,製造物は動作不良を多く抱えたまま最後の総合テストに突入してしまうことになります。最初から成功の条件を破壊されたプロジェクトは最後の総合テストにおいても品質すら満足に達成することもできずに,悲惨なトラブルを招く運命となります。
ただし,問題なく進むプロジェクトがあるのもの事実です。その差は,いったい何でしょうか?
本連載は,これらの各開発工程での問題や課題へのアドバイスや格言を,筆者の豊富な経験則も交えながら紹介していきます。
- 第2回 空気読みのコミュニケーション
- はじめに
- #8:他人の評判に従って自分の行動を決めてはいけない
- #9:投げることよりも受けること
- #10:フェイス・トゥ・フェイス(face to face)
- #11:直接話をするということ
- #12:物事は,事前の準備があれば失敗はしない
- #13:教養の幅は人間性の幅を広げる
- #14:わからない質問には無理に答えるな
- おわりに
2016年3月4日
- 第1回 勘と度胸の見積もり
- はじめに― 見積もりとは?
- #1:見積もり回答は契約なのだ
- #2:目には目を,歯には歯を
- #3:結果をあせるな,利をあせるな
- #4:今日やるべきこと,明日やればよいこと
- #5:当たり前は難しい
- #6:とりあえず高いという人種
- #7:許容範囲~どこまでも許されるわけもない
- おわりに~見積回答書の重要性
2016年2月29日