弁護側「追起訴は違法」 画像投稿
東京都三鷹市で2013年10月、元交際相手の女子高校生(当時18歳)を殺害したとして殺人罪などに問われた無職、池永チャールストーマス被告(23)は4日、東京地裁立川支部(菊池則明裁判長)で開かれた差し戻し審の裁判員裁判初公判で、高校生の画像をインターネットのサイトに投稿したとして追起訴された児童ポルノ禁止法違反も含め、起訴内容を「認めます」と述べた。弁護側は、追起訴は公訴権乱用で違法だと主張した。
被告の画像投稿は「リベンジ(復讐(ふくしゅう))ポルノ」として社会問題化したが、検察側は当初、この行為自体は起訴しなかった。検察側は法廷で遺族の意見陳述を読み上げて追起訴の経緯を説明。弁護側は、差し戻し前の1審で問わなかった罪を追加するのは「刑事訴訟法の目的に反する」として追起訴は無効と指摘した。菊池裁判長は追起訴の当否について、裁判員法の規定に基づき裁判官3人だけで判断し、結果は判決で示すとした。
1審は投稿を「殺害と密接に関連する」と重視して懲役22年としたが、2審の東京高裁は「起訴されていない罪で実質的に処罰した疑いがある」と審理を差し戻した。遺族は、差し戻し審では投稿が判決に反映されず刑が軽くなる可能性を懸念し、児童ポルノ禁止法違反容疑で告訴。これを受け検察が同法違反などで追起訴し、殺人などの起訴内容と併合して審理されることになった。
検察側は冒頭陳述で、別れ話を切り出された被告は、画像を流出させると示唆して関係継続を求めたが、かなわずに未練と恨みを募らせ、高校生の殺害と画像投稿を計画、実行したと指摘した。
1、2審判決や起訴状によると、池永被告は13年10月8日午前、三鷹市の高校生の自宅に侵入。同日夕、高校生の首や腹を所持していたナイフ(刃渡り13センチ)で刺して殺害した。また、同年7月以降、高校生の画像13点をインターネットのサイトに送って保存したうえで、10月6日と8日、ネット上でサイトのURLを公開し、不特定多数の利用者が閲覧できる状態にしたとされる。判決は15日。【賀川智子、山下俊輔】
遺族「もれなく処罰を」
高裁判決後、検察が異例の追起訴に踏み切った背景には、差し戻し審で量刑がさらに低くなることへの懸念がある。追起訴により、裁判員は差し戻し前の判断にとらわれずに量刑を評議できることになった。
差し戻し前の1審判決は、無期懲役の求刑に対して懲役22年。これに対して東京高裁が「起訴されていない画像投稿の行為を実質処罰した疑いがある」と差し戻した。地裁は上級審である高裁の判断に拘束されるため、起訴内容が変わらなければ、差し戻し審では画像投稿の立証は制限される。懲役22年を上回る判決を言い渡すのは難しい。
遺族は当初、画像投稿が改めて取り上げられるのを望まず、検察も遺族感情を考慮して児童ポルノ禁止法での起訴を見送った。だが、2審判決を経て遺族が「被告の行為がもれなく処罰されることを求めたい」と告訴し、追起訴に至った。裁判員がこうした経緯をどう量刑に反映させるかも、裁判のポイントになる。【山下俊輔】
三鷹ストーカー殺人事件の経緯
<2013年>
7月以降 池永チャールストーマス被告が女子高校生の画像をインターネットのサイトに保存。10月6日以降、閲覧可能な状態に
10月8日 女子高生が午前中に三鷹署にストーカー被害を相談。午後、自宅で殺害される。警視庁が池永被告を逮捕
<2014年>
8月1日 東京地裁立川支部が懲役22年の判決
<2015年>
2月6日 東京高裁が審理を差し戻し
7月10日 遺族が児童ポルノ禁止法違反容疑で被告を告訴
8月7日 東京地検立川支部が被告を追起訴
21日 東京地裁立川支部が追起訴部分を従来の起訴内容と併合して審理することを決定
<2016年>
3月4日 東京地裁立川支部で差し戻し審始まる
15日 判決(予定)