米連邦政府がカリフォルニア州サンバーナディーノで銃を乱射したサイード・リズワン・ファルーク容疑者のスマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)」のロック解除を米アップルに迫っていた問題で、ニューヨーク州連邦地方裁判所の判事は2月29日、連邦政府の主張の一部に疑問を呈した。
■IoT時代のプライバシー問題につながる
ニューヨーク州東部地区連邦地方裁判所のジェームズ・オレンスティン下級判事は、この件に「全令状法(法律の執行に必要な令状を全て発行できると定めた法律)」を適用する点をやり玉に挙げた。判事はこの数カ月、別の訴訟を担当してきた。麻薬密輸の罪で起訴され、持っていた「iPhone5s」を米麻薬取締局(DEA)の捜査官に押収されたニューヨーク市クイーンズ地区在住のジュン・フェン容疑者の事件だ。アップルはこの訴訟で全令状法が適用されるのではないかと恐れていた。
オレンスティン判事は「この問題(サンバーナディーノの銃乱射事件)は、アップル製端末のパスコードを政府に協力して無効化するようアップルに裁判所が命じる権限をめぐり、米政府とアップルが争っている十数件の訴訟の一つだ」と論じた。さらに、いくつかの点で全令状法の具体的な判例引用に及んだ。
この見解は非常に興味深い。連邦判事が米司法省の検事らの要求を退け、代わりにアップル側を支持していることを示しているからだ。
オレンスティン判事はアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が指摘した点を一部踏襲した。
例えば、判事はこの問題を非公開の裁判所ではなく、米議会で議論すべきだと勧告。「この問題は昔の議員には想像もつかなかったテクノロジーや文化の現実について検討できる政治家同士で議論されるべきだ。米国の建国者らが既にこの問題について議論し、1789年に結論を出したと判事が言い張れば、憲法の地位や民主的な統治制度を求める国民の権利に背くことになる」と主張した。
しかも、オレンスティン判事は政府寄りの判断を下せば、悪い方向に進む危険があることを認識している。判事は補足説明で、アップルのiPhoneについての議論を超え、インターネットに接続される機器全般に焦点を当てた。今回の審理で特に注目されていたわけではない分野だ。