原油価格が暴落しています。
供給面では、アメリカのシェールガス・オイルへの影響が注目されます。「シェール革命」による2000年代後半からのアメリカの生産増加は顕著です。
しかし、直近ではその勢いに陰りが見られます。
2000年代半ばからの原油価格急騰は、中国の驚異的な高成長が関係していると見られます。このことは、中国経済の低成長化が、原油価格の再上昇を抑制する要因として働くことを示唆します。
原油価格下落は、直接的には日本にとっては大ボーナスです。2015年の輸入額は、対GDP比で前年比2.0%ポイントも減少しました。
しかしながら、そのボーナスは企業部門で貯め込まれてしまうため、家計消費を刺激するには不足します。
消費が停滞しているのは消費税の影響だという意見がある。しかし、資源価格の下落は、消費税増税額をはるかに上回る効果を日本経済に与えているのである。それは、消費税を全廃した場合の結果にも近いものだ。だから、本来は、所得が増え、消費が増えるはずだ。
では、この利益はどこに消えてしまったのだろうか? 企業利益が増え、企業の内部留保が増えた段階で止まってしまっていると考えざるをえない。
円安は企業利益を増加させただけで賃金所得を増加させなかったが、資源価格下落の効果も、賃金所得には及んでいないわけだ。つまり、どちらの場合にも、トリクルダウンなどまったく生じていないのである。
「一番の原因は企業セクターにあるのじゃないかとも思います。企業は賃金をなるだけ上げず、配当も配らないで金融資産ばかりを持つ。企業のおカネに対する執着、流動性が高い準貨幣(換金化しやすい金融商品=筆者注)をいっぱい持つということが、岩田規久男日銀副総裁のいうインフレ期待を妨げるんです」
がん細胞が自らの増殖のために際限なく栄養を使う結果、生体が衰弱してしまうように、日本経済も、企業がひたすら資金余剰を続ける結果、衰弱死に向かっているようです(1998年度以降の非金融法人企業の資金余剰は累計で401兆円)。企業の必要以上の財務健全化は、日本経済にとっては有害です。
銀行をマイナス金利で締め上げるよりも、企業の「おカネに対する執着」を何とかするべきでしょう。
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