がん、糖尿病が息だけで診断できる時代に

高精度センサー実用化へ

人の息だけでがんや糖尿病などにかかっている疑いを診断できる高精度センサーが産官学合同で開発され、2022年にも実用化される見通しとなった。

将来的には、センサーをスマートフォンなどに組み込み、個人でも手軽にチェックできるようになる可能性もある。早期発見で、膨らむ医療費の抑制にもつながると期待される。

国立研究開発法人の物質・材料研究機構(NIMS、茨城県つくば市)が中心となって、呼気のにおいを分析し、含有物質を高精度で判別できる小型センサーを開発した。京セラ、NEC、住友精化、大阪大、スイスの精密機器メーカーと合同で実用化を進めている。

数ミリ四方の小さいチップであるセンサーに搭載された「膜」が呼気の特徴を検知し、がん患者の呼気に含まれる特有の物質の有無などをチェックしてがんの疑いがあるか判定する仕組みだ。センサーを搭載したり接続したりしたスマホやパソコンなどにグラフや数値で結果が示される。

NIMSによると、センサーの精度を高め、においに関するデータを蓄積していけば、がんの種類も見極められるようになる可能性が高いという。

糖尿病や腎臓病、肝臓病、ぜんそく、ピロリ菌なども呼気に特徴が出るといい、センサーで様々な病気の判別ができるようになりそうだ。医療機関の診断のほか、個人が健康や病気をセルフチェックする機器として用いることが検討されている。

小型センサー1個の製造コストは数百円ほどで量産できる。実用化には、がんのにおい物質に関するデータの収集や精度を高めるための開発、国による医療機器の認証などにより、6年ほどかかる見通しだ。

がんは日本人の死因のトップで、年間40万人近くが死亡している。内閣府による14年の調査では、がん検診の受診率は約40%で、欧米の先進国の半分程度という。受診しない理由は「時間がない」「費用がかかる」「痛みに不安がある」などが多く、手軽な呼気診断は受診率向上につながりそうだ。ただし、病気の確定には医療機関で詳しい検査を受けることが必要だ。

がんに詳しい日本医科大の宮下正夫教授(消化器外科)は「がん治療には早期発見が有効だ。呼気による簡単な検査が普及すれば画期的だ」としている。

関連記事
Topic Board トピックボード
人気連載
Trend Library トレンドライブラリー
Access Ranking
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチ
今年こそ!英語

10年ぶりに大刷新されるTOEIC。新問題を最速予想する。200点アップを目指す。月ゼロ円から学べて学習が楽しくなる「アプリ26選」、すぐに役立つ「文例&表現305」も紹介。