韓国のスポーツ界で暴行傷害事件が今なお相次ぐ原因について、専門家たちは「曲がったスター意識やプライド」「暴力を後輩への教育と考える風潮」「甘い処分」などを挙げた。
大韓重量挙げ連盟のある幹部は「(サ・ジェヒョク選手ほどの)スターになれば、監督やコーチも選手を指導することができない」とした上で「スターになればなるほど、選手は自分の言動に注意しなければならないが、(サ選手は)自分自身を見失ってしまったようだ」と指摘する。
スポーツ界の暴力的な風潮に対し、表面的にはさまざまな対策が講じられているようにも見えるが、実際は何も改善されていないとの指摘も相次いでいる。別種目の実業団チームで監督を務めるある人物は現状について「選手たちの間では、木の棒で後輩の尻を繰り返し殴る程度は当然のことと考えられている」とした上で「後輩への体罰は、指導という観点から『あって当然』と見なされている。以前のように一人を取り囲んで集団で暴行を加えるようなことさえしなければ、さほど問題にならないと考える風潮がある」と説明した。別のある元選手は「サ選手がいるため、泰陵選手村に入るのを嫌がる若手選手がいるという話を聞いたことがある」「これまでサ選手の暴走を抑えられなかった監督やコーチにも責任があるはずだ」と指摘する。重量挙げ連盟のある関係者は「サ選手が若い頃、コーチに激しく殴られるのを直接見たことがある」「要するにスポーツ界にまん延する暴力的な風潮がずっと受け継がれてきたということだ」などと指摘した。
連盟や協会の対応や処罰が甘いことも、暴力がなくならない原因の一つだ。何か問題が起こるたびに「内輪の擁護」と言わざるを得ない寛大な処罰で終わるケースが多く、コーチも選手も暴力への認識が甘くなりがちだ。昨年9月、ショートトラックの韓国代表合宿でシン・ダウン選手が後輩を殴る不祥事が発生したが、その時もスケート連盟は「警告」という軽い処分で終わらせた。そのためシン選手は今シーズンについては公式戦に出場できないが、3月以降予定されている代表選抜試合には最初から出場できるという。