韓国の一流シェフの多くは、インタビューで「最高の料理は」と聞かれると「母が作ってくれた家庭料理」と答える。「母の味」というフレーズは、妻の料理に文句をつけるときには有効だが、プロの料理人が判で押したように基準とすべきものではないはずだ。韓国の一流シェフの目指すものが「家庭料理」だとすれば、香港、ニューヨーク、パリなど「飲食産業」で稼ぐ国・都市のようには到底なれないだろう。
これはシェフだけのせいではない。「肉も、食べたことのある人がよく食べる(経験があった方がよくできる、という意味のことわざ)」と言われるように、おいしいものを食べた経験のある人こそがおいしい料理を作る。韓国料理のシェフたちに「より高い基準」を見せてやるべきだ。金持ちが高い料理を食べ、高級店のシェフたちが金を稼ぎ、彼らの才能を社会に「還元」できるようにすべきだ。歌手PSY(サイ)の母、キム・ヨンヒさんはレストラン事業で成功しているが、そのキムさんが次のようなことを提案した。「高級店のシェフたちが『若手シェフ』をあらためて教育し、その費用は自治体や国が負担する。その代わり若手シェフは外国公館や政府機関の厨房(ちゅうぼう)で、教育を受けた期間と同じだけ働いて奉仕してはどうか」。この提案を実行に移せば、われわれが普段食べている安い庶民料理はもちろん、「大統領府の料理」の質がより良くなるのではないかと思った。