与党セヌリ党の朴大東(パク・テドン)議員の元秘書が、自らの給与の中から毎月120万ウォン(約13万円)を朴議員に上納させられてきた事実を公表した。昨年1月まで朴議員の秘書を務めてきたこの男性は、あるメディアとのインタビューで「毎月の給与から13カ月連続、総額で1500万ウォン(約160万円)を朴議員に送金した」「そのほとんどは朴議員が自ら住むマンションの管理費や光熱費など、私的に使われていた」などと暴露した。男性は朴議員に自らの経済事情を説明したものの「お前はここに金を稼ぎに来たのか」と言われて追い返されたという。これに対して朴議員は現金を受け取った事実は認めたが「事務所の運営経費が足りなかったため、その埋め合わせに秘書が自発的に支払ったものだ」などと説明している。
国会議員は法律で9人の秘書を置くことが認められているが、その給与をピンハネして政治資金や個人の用途に使うという事例は、汝矣島の国会周辺などでは実は公然の秘密だ。政治資金法などに違反した容疑で、一審と二審で有罪判決を受けたセヌリ党の朴商銀(パク・サンウン)議員は経済政策を担当する秘書の給与をピンハネした容疑で、また立法ロビー汚職の容疑で起訴された野党・新政治民主連合の辛鶴用(シン・ハクヨン)議員は、後援会費の名目で複数の秘書から総額2億ウォン(約2100万円)を集めた容疑が掛けられている。秘書を採用する際に最初から給与の一部上納を条件として提示し文句を言わせないケース、あるいは秘書を昇進させる際に給与の増額分をピンハネするといった手口もよく使われているようだ。家族や親戚、あるいは名義だけの秘書を採用し、その給与を横領するケースも珍しくない。
国会議員には年間1億4000万ウォン(約1500万円)の歳費に加え、車や事務所などさまざまな支援が国から与えられている。ところがこれでも満足せず、秘書の給与にまで手を付けるケースが珍しくないというのだから、議員の欲深さはまさに際限がない。韓国では契約書の甲乙になぞらえて、社会的な強者と弱者の関係を「甲乙関係」と呼ぶ風潮があるが、国会議員が甲として乙の立場にある秘書らに横暴を振るう悪習については、これまで国会も与野党も適当に目をつむってきた。おそらく今回の朴大東議員秘書の問題も、やはり適当にあしらわれて終わるだろう。