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北京で「赤色警報」 日系企業などに影響も
12月8日 19時30分

北京で「赤色警報」 日系企業などに影響も
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中国の北京では、大気汚染に関する警報の中で最も深刻な「赤色警報」が出されたことを受け、小中学校が休校になったほか一部の日系企業が在宅勤務の措置を取るなど、影響が広がっています。
北京市政府は7日夜、重度の大気汚染が72時間を超えて続くことが予想されるとして、大気汚染に関連した4段階の警報のうち、最も深刻な「赤色警報」を初めて出しました。
北京市内は8日も各地で、大気汚染物質PM2.5の濃度が1立方メートル当たり300マイクログラム以上で、日本では1日の平均で35マイクログラムとしている国の環境基準や、環境省が指針で「外出を控えるよう呼びかける」としている70マイクログラムをはるかに超えています。
「赤色警報」が出されたことを受け、北京市政府は、市内の小中学校や幼稚園に対して休校とするよう指示を出し、児童・生徒合わせて406人が通う日本人学校も休校となりました。また北京市内では8日朝から、ナンバープレートの末尾の数字が偶数か奇数かによって市内での走行を制限し、車の数を半分程度まで減らす措置も始まりました。
北京市政府は10日まで、車の走行の制限や、大気汚染物質を排出する工場の操業停止などの措置を続けることにしていて、市民生活に影響が広がっています。

北京市では、重度の大気汚染が予測される場合その予測される汚染期間に応じて4段階に分けた警報を出しています。
中国では、PM2.5やPM10などの大気汚染物質の値をもとに、人体への影響リスクを示した指数を定めていて、この指数が200を超えた場合、重度の大気汚染とみなされます。この重度の大気汚染が予測される期間が、1日であれば青色警報、2日間であれば黄色警報、3日間であればオレンジ色警報、さらにそれを上回り、72時間を超えて続く場合は、赤色警報となっています。
この警報制度は2013年10月に導入されており、赤色警報が出されたのは、今回が初めてです。
中国外務省の華春瑩報道官は8日の定例の記者会見で、「大気汚染の問題は、気候変動の問題と原因が同じであり、環境保護や気候変動への対応が緊迫していることを浮かび上がらせている」と述べ、対策が急務であるという考えを示しました。そのうえで「政府と社会が努力し、各地の大気汚染問題が絶えず改善していくと信じている」と述べ、大気汚染問題に国を挙げて取り組む姿勢を強調しました。

日系企業 在宅勤務などで対応

一部の日系企業は、在宅勤務や勤務時間の短縮などの対応を取っています。
このうち大手電機メーカーの日立製作所は、子会社の北京にある拠点で働く日本人駐在員と現地スタッフに対し、8日から警報が続く10日までの3日間、原則、在宅勤務で業務を行うよう指示を出しました。また、業務上必要がある従業員については出勤とするものの、出退勤の時間帯はフレックスタイムにするとしており、日立製作所は「従業員の健康面を配慮したうえでの対応だ」としています。
一方、東芝の北京にある子会社では8日から3日間、子どもを持つ日本人駐在員と現地スタッフに対して、出勤時間を1時間遅らせるか、退勤時間を1時間早めることを認める通知を出しました。勤務時間が短くなった分は別の日の勤務に振り替えるとしていて、東芝では「学校が休校になるなか、従業員の負担を少しでも軽くするために対応した」としています。

病院は 店の売り場は

北京市中心部にある子ども専門の病院には、せきが止まらないなど具合が悪くなった子どもを連れた家族たちが次々と訪れていました。病院のスタッフによりますと、寒い日が続いていることに加えて大気汚染が深刻になったことから、ふだんよりも患者の数はかなり多いということです。
せきがひどいという男の子を連れた母親は、「1か月もせきが続いているのですから、大気汚染以外の原因は考えられません。子どものために、青い空や白い雲が見られるようになってほしいです」と話していました。

赤色警報が出されたことを受けて、北京では、空気清浄機や大気汚染物質PM2.5を防ぐ機能がある製品を買い求める人が相次いでいます。北京市内にある家電量販店によりますと、この店では、ふだんは空気清浄機の販売は1日10台程度ですが、赤色警報が出た7日は10倍のおよそ100台が売れ、8日も営業開始から客がひっきりなしに訪れて、5時間余りで60台以上が売れたということです。
売れ筋は、日本円で1台10万円から12万円程度のPM2.5を取り除く性能が優れた比較的高い製品で、中にはお目当ての製品の在庫が無くなり、展示してあったサンプル品を購入した客もいました。客の男性は「自宅に1台ありますが、大気汚染が心配でもう1台必要だと思いました」と話していました。
一方、北京市内に5店舗を展開する日系のスーパーでは、空気中のPM2.5の大半を遮断できるという高機能のマスクの売れ行きが伸びています。
通常は北京の店全体で売れる数は1日100個弱程度ですが、記録的に深刻な大気汚染が起きた先週以降、多い日には20倍の1日2000個近くが売れたということです。このスーパーではこのほか、うがい薬もふだんの30%以上、販売が伸びているということで、これらの製品は品質のよさから日本製の人気が高いとしています。

「逆転層」がふた 原因の1つに

北京で大気汚染物質PM2.5の濃度が高くなっていることについて、気象庁は、地表付近の気温が上空よりも低くなる「逆転層」が現れ、上昇気流が起きにくく、上空にふたをされたような状態になっていることが原因の1つと指摘しています。
気象庁によりますと、北京の周辺は高気圧に覆われておおむね晴れの日が続き、夜間に地表の熱が奪われる放射冷却現象の影響で、地表付近の気温が上空より低くなる「逆転層」が起きているということです。
「逆転層」が起きると上昇気流が発生しにくく、上空にふたをされたような状態になって、大気汚染物質が地表付近にとどまりやすいということです。
また、冷たい高気圧に覆われて日中も気温があまり上がらないうえ、上空の風も弱く、大気汚染物質が上昇しても周囲に拡散しにくく、濃度の高い状態が続いているということです。
気象庁などよりますと、北京の周辺では今後もしばらくは高気圧に覆われ、PM2.5の濃度が高い状態が続くと予想されるということです。

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