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化血研、血液製剤不正の隠蔽20年以上 第三者委報告

2015/12/3 0:35
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 熊本市の化学及血清療法研究所(化血研)が国の承認していない方法で血液製剤を製造していた問題で、化血研の第三者委員会は2日、20年以上にわたり、虚偽の記録を作成するなどして不正の隠蔽を図ってきたとする報告書を公表した。歴代幹部が不正を認識しながら放置してきたと指摘し、「重大な違法行為で、常軌を逸した組織的な隠蔽体質だ」と批判した。

2日、記者会見で謝罪する化血研の宮本理事長(左)ら=厚労省

 不正を調査していた第三者委員会は、2日開かれた厚生労働省血液事業部会に報告書を提出。厚労省は近く、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき化血研を立ち入り検査し、業務改善命令などの行政処分を出す方針。

 今回の問題を受け、化血研の宮本誠二理事長は2日付で辞任した。他の全理事も同日付で辞任や降格などの処分とし、前理事長の船津昭信名誉理事長・所長は名誉職を辞任する。近く開く評議員会で新たな理事を選任する。今後は理事会に外部人材を入れ、組織の閉鎖性を改めるとした。

 報告書によると、化血研は製造の効率化などのため、血液が固まるのを防ぐ物質を添加したり、薬品に熱を加える時間を変えたりするなど、12種類の血液製剤の約30工程で未承認の方法を採っていた。多くは1980年代から行われ、一部は約40年前から続いていた。

 遅くとも95年ごろからは、製造方法を確認する国の定期調査で不正が発覚しないよう隠蔽工作を繰り返していた。承認された製法で作ったとする偽の記録を用意。調査で存在しない過去の書類を要求されると、偽の書類に紫外線を浴びせて変色させ、作成時期を古く見せるなどしていた。

 製造工程を変更する際に必要な国への申請もしておらず、これらの方針を理事長を含む幹部が決定して引き継いでいた。

 報告書は、化血研が薬害エイズ訴訟の被告企業だったことに触れ、96年の原告との和解成立時に「医薬品による悲惨な事故を再び発生させないよう最大の努力をする」と確約したにもかかわらず、裏で不正を行っていたことを非難。「組織の閉鎖性、独善性が最大の原因」「研究者のおごりも根幹にある」と断じた。

 血液製剤についての副作用報告は増えていないことから、厚労省は承認されていない方法で作られたことによって健康に重大な影響が出る可能性は低いとみている。

 化血研は一般財団法人の薬品メーカー。旧熊本医科大内に開設された研究所を母体とし、1945年に熊本市に設立された。血液製剤の売上高の国内シェアは2位。国内シェアの約3割を占めるインフルエンザワクチンでも、国の承認していない方法で製造していたとして厚労省が一時出荷自粛を要請していた。

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