これら与野党の攻防は「生徒にどのような教育を施すか」という本来のテーマとは全く関係がないものだった。教科書とは生徒たちが学ぶ内容が書かれた本だが、野党議員らによるこの日の発言には「生徒」や「教育」という言葉はなかった。新政治民主連合の朴恵子(パク・ヘジャ)議員は「歴史教科書の国定化は歴史に対するクーデター」と題された報道資料の中で「大韓民国国務委員(閣僚)候補者たちが教科書に記載されている5・16軍事政変について正面から語ることさえできない。これは大統領の顔色をうかがっているからではないのか」と述べた。つまり教科書は手段にすぎず、結局この場で行われていたのは「権力争い」に他ならなかったのだ。
与党議員らも野党からの政治攻勢に反撃することしか考えていなかった。例えば金学容(キム・ハクヨン)議員は「全羅道や慶尚道など地域によって生徒たちが学ぶ歴史が違ってもいいのか」と野党に反論した。つまり検定と国定のどちらが生徒のためになるかについて、与党も野党も論理的な説明や主張など一切行わなかった。もし韓国史教科書を国定化するのなら、執筆、検討、配布を今後1年以内に終わらせなければならないが、この問題を指摘し心配する声も出なかった。結局議員たちの関心は「次の世代の有権者をいかに自分の側に付けるか」にあった。数年後には1票を行使する高校生の「歴史認識」に大きな影響を及ぼすであろう教科書を、自分たちに都合がいいように作りたいわけだ。
今回の韓国史教科書の見直し論議は、イデオロギー的に偏向せず、誤りのない良い教科書を作り上げるという趣旨で始まった。しかしこの日の国政監査における与野党の攻防からは、われわれの子供たちに対する教育と未来について、政治家たちが真剣に考えている様子をうかがい知ることはできなかった。このままではまた欠陥と誤りだらけの教科書が登場し、それによる学校現場での混乱が再び繰り返されるのが目に見えている。