恐竜:国内初の大型ティラノサウルス科 長崎で歯の化石
毎日新聞 2015年07月14日 11時30分(最終更新 07月14日 12時43分)
福井県立恐竜博物館(同県勝山市)と長崎市は14日、長崎市の長崎半島西海岸に分布する白亜紀後期の地層「三ツ瀬層」(約8100万年前)から、ティラノサウルス科の獣脚類(肉食恐竜)の大型種のものとみられる歯の化石2点が見つかったと発表した。歯の大きさから体長は10メートル前後と推測される。ティラノサウルス科の大型種の化石は北米やアジアで多数見つかっているが、国内では初めてという。
恐竜博物館によると、長崎市との共同調査で昨年5月に発見した。1点は先端から歯根部の長さが8.2センチ、歯冠基部(根元)は最大幅が3.8センチ、厚さが2.7センチ。保存状態が良く、水平断面は膨らみのある楕円(だえん)形。歯の形状や大きさが、北米のティラノサウルスやアジアのタルボサウルスなどティラノサウルス科の大型種と似ているという。
もう1点は欠損や変形があるが、いずれも獣脚類の特徴であるノコギリのような突起「鋸歯(きょし)」や「血道(けつどう)」と呼ばれる溝があった。2点の発見場所は約1メートルしか離れていなかったが、同じ個体のものかは不明。
ティラノサウルス科の恐竜や祖先的な種類を含むティラノサウルス上科の化石は近年、福井、石川、兵庫、熊本、福島の5県で見つかっているが、いずれも体長3〜5メートルの小型個体とみられ、年代も今回より古い。
三ツ瀬層では過去にティラノサウルス科以外とみられる大型獣脚類など4点の歯の化石が見つかっている。恐竜博物館の宮田和周主任研究員は「白亜紀後期の長崎周辺に大型肉食恐竜が生息していた可能性が高まった。ティラノサウルス科の分布域とアジアでの詳しい生息年代を知る上でも貴重な発見だ」と話している。【村山豪】
◇真鍋真・国立科学博物館生命進化史研究グループ長の話
大型獣脚類の化石であることは間違いなく、ティラノサウルス科の可能性がある。一方、ティラノサウルス科だけに進化した特徴を持つわけではなく、分類結果については異論が出るかもしれない。ただ、北米に比べて白亜紀最末期の恐竜生態系データが乏しいアジアで大型獣脚類の化石が発見されたことは、恐竜の多様性の解明に向けた一歩だ。