新国立2520億円でも無理だった 周辺整備費72億円を未記載

2015年7月14日6時0分  スポーツ報知
  • 新国立工費の差異
  • 19年の完成が予定されている新国立競技場のイメージ(日本スポーツ振興センター提供)

 2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の総工費が2520億円と膨らんだ問題で事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が敷地外にある2つの歩行者デッキ(立体歩道)など、計72億円の整備費を総工費に含まず発表していたことが13日、分かった。JSCは、これまでは歩行者デッキなどの整備費を含んで試算していたが今回は、未記載のまま発表した。JSCの担当者は、スポーツ報知の取材に未記載の事実を認め、改めてずさんな見積もりが浮き彫りになった。

 複数の政府関係者によると、JSCは2014年5月に示した基本設計で、駅からのアクセスが多いと想定する歩行者用デッキ(立体歩道)1号、2号の整備費を37億円とし、水道などのインフラ設備の移設費の35億円と合わせ、計72億円と試算。当時の総工費1625億円には、この72億円が含まれていた。

 だが、7日の有識者会議で示した総工費2520億円には、この金額はなかった。JSCは「今回示した総工費に72億円は含まれていない」と認めた。未記載の理由について「歩行者デッキなどは見直しを図っていくので含めなかった」と回答した。

 これまでJSCは72億円を未記載にした理由を、公表してこなかった。内部で見直しを図っているのなら、有識者会議はもちろん、これまでに自らが未記載について説明するべきだった。ただでさえ総工費がこれまでの1625億円から900億円も膨らみ批判が集中。こうした流れから意図的に発表しなかった疑惑も浮上するが、JSCは「隠したわけではありません。あくまでも調整を続けているためで歩行者デッキなどを含め今後、縮小を図っていく」と説明した。デッキなどをなくすかどうかについては「現段階では分からない」としたが、これまで公表しなかった説明責任も含め、計画があまりにもずさんなことが改めて浮き彫りになった。

 JSCの計画では、都の都市計画に基づき、隣接する東京体育館と建物敷地を結ぶ歩行者デッキ1号と、南側の都立公園予定地と新国立の敷地を結ぶ歩行者デッキ2号を整備する計画だった。歩行者ネットワークを強化する目的で「歩行者デッキから新国立の敷地までバリアフリー化を図り、スムーズにアクセスできる」としていた。

 文科省などは今回計上しなかった歩行者デッキ37億円分を都負担分として想定しているとみられるが、「都で500億円の負担が可能」として、首相官邸に報告した経緯がある。東京都の舛添要一都知事(66)はこうした動きについて、「負担可能なのは周辺整備のみ」と主張。「法的に拠出できるのは、50億円程度」と反発していた。

 72億円は、「2520億円」と比較すると小さい金額に感じてしまうが、実は3万5000人収容のスタジアムを建設することも可能な巨費だ。プロ野球・オリックスの準本拠地「ほっともっとフィールド神戸」(神戸市)は1988年に、約60億円で建設されている(当時の名称はグリーンスタジアム神戸)。JSCは、野球場が建設できる巨費を未記載していたことになる。

 JSCの河野一郎理事長はこの日、「この競技場が五輪招致を勝ち取る上で、大きな役割を果たした。基本的に有識者会議でああいう結論を頂いたので、われわれとしてはきちんと前に進めていく必要がある」と述べた。

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