印南敦史 - コミュニケーション,スタディ,仕事術,書評 06:30 AM
誤解されやすいメールやSNSでのスマートな謝り方
以前、『はじめての男の婚活マニュアル』という本をご紹介したことがありましたが、その続編にあたるのが、『はじめての男の謝罪マニュアル』(男の謝罪研究会著、秀和システム)です。文字どおり、謝罪の仕方を場面ごとに解説した実践的なマニュアル。唐突な気もしますが、「はじめに」には、出版の意図についてこのような記述があります。
正しい謝罪の仕方については、学校で授業もなく教科書もなく、親も先輩や上司も誰も教えてくれません。(中略)誰もが、突発的に起きた事に対して、瞬発的になんとなくの勘で謝っているのです。
だからこそ、「謝罪マニュアル」をつくってしまおうという大胆な発想。下準備にはじまり、さまざまな立場の人への謝り方までが解説されています。きょうはSTEP 7から、「『ネットでの謝罪』の基本、「メールで謝る」、そして「FB、ツイッター、LINEで謝る」を見てみましょう。
気持ちを先に見せておく
「そういう意味で書いたんじゃない」という誤解をいかに回避するかが、ネット謝罪のキモ。謝罪は誠意なので、対面してきちんと謝るべきですが、「謝りたいという気持ちだけでも先に見せておく」ことが効果的だそうです。使い方を間違えなければ、相手の心を確実に動かすとか。
そしてスピード感もさることながら、ネット謝罪の最大の利点は「証拠が残る」こと。ブログやTwitterで「反省の気持ち」を表現するにせよ、どのタイミングで反省の意を表明したのかがわかるわけです。それが「トラブル発生後、間髪入れずなタイミング」だった場合、あとで見返されたときにじわりと響くといいます。
「読解力格差」に注意
本気で謝りたいときほど、気持ちを込めた長文に走ってしまいがち。しかし、長文は禁物だと著者は主張しています。なぜなら、まったく違う方向に意味を捉えられる危険性があるから。ネット上での意思表示はシンプルに止め、直接的な誠意は直接会ってぶつけるようにした方がいいそうです。
しかし、どれだけ気を遣っても意図を誤解されてしまうことはあるもの。ネットは誤解を生みやすく、ネット経由での弁解には限界もあります。ある段階までこじれたら、聞く耳を持ってもらえなくなるということ。そんな場合は、スパッとネットを断ち切って、直接会って話し合う算段をつけるべきだといいます。まずは電話を。
謝罪メールを送ったら、すぐに色よい返事が返ってきたとします。当然ながらうれしいですから、「もっと仲よくなりたい!」と、ついつい調子に乗ってしまいがち。ただし、それでは予想外の方向から新たな火種が生まれるものだと著者は記しています。いい雰囲気になってきたと感じても、会って話すまでは調子に乗ってはいけないということです。(196ページより)
では次に、メールでの謝り方を見てみましょう。
件名
相手がメーラーを立ち上げ、件名がずらっと並んだ瞬間に「あ、◯◯さんからの謝罪メールだ」と視認してもらえないと意味がありません。そこで、件名は「【お詫び】納期延長の件」のように、最初の数文字から「謝罪感」を出しておけば、間違いなく目にとまるといいます。
文面
そして文面はとにかく長文は禁物で、シンプルにまとめることが大切。トラブルの内容と「どうリカバリーするか」を簡潔に書き、あとは「一度電話して詳しい事情を話したい。そして、なるべく早く会いたい」という気持ちを伝えるべき。「そっけないと思われないかな」という程度の温度で充分だと著者。メールに、プロローグ以上の役割を期待してはいけないということです。
送るタイミング
「メール→電話→会っての謝罪」、ここまでの所要時間が短ければ短いほど、誠意が伝わるもの。仮に深夜や早朝に送信しなければならなかったなら、「こんな時間に申し訳ない」という意の一文を添えることを忘れずに。
とはいえ、すぐに相手から反応があるとは限りません。気がついていないのかもしれないし、サーバートラブルの可能性もあります。しかし、いろいろ不安に思う暇があったら、すぐに電話をかけること。「メールしたのですが」という大義名分があるので、電話もしやすいわけです。
反応があった場合は、その内容がどうであれ、「返信してくれてありがとう」という感謝の意を示したメールをすぐに送るべきだと著者はいいます。(198ページより)
続いて、「FB、ツイッター、LINEで謝る」をご紹介します。フェイスブックやツイッターは「知人への近況報告」が主目的ですし、LINEはさらに謝罪には適していないようにも思えます。が、SNSも重要な伝達手段であるだけに、考えておいて損はなさそうです。
Facebook、Twitterで謝る
Facebookはある意味で「仲よしグループ」の場なので、「謝ってますアピール」は神経を逆なでするもの。そこで、独り言をブログ以上にあっさりと書く程度に抑えるべきだそうです。
またTwitterで謝る場合も、140字をフルに使った長文は避けるべき。「この間のあれ、悪いことしたな~」くらいの軽いノリで、お詫びの気持ちをアピールするといいとか。しかしFacebookと同様に、見てもらえないつぶやきは無意味。相手がタイムラインにいるときを逃すべきではなく、「謝罪に関係ないつぶやき」とのバランスも計算する必要があるとのこと。
なおブログやSNSの日記での連投は気に触るものですが、文章量の少ないツイッターならそれもありだと著者。とはいえ、相手がそれぞれのつぶやきを関連づけ流れで読んでくれるとは限らないので注意が必要。単発で見ると反論や批判だと誤解されかねないフレーズは使用厳禁だというわけです。
LINEで謝る
LINEには既読表示があるので、つまりは「独り言」ではなく「対話」だということになります。そのぶん、短文一言だと誠意が伝わりにくく、かといって長文にも適していません。というわけで、LINEは「いま、電話していい?」に至るまでのつなぎ程度に考えた方がいいわけです。
既読表示を出さずに読む裏技もあるとはいえ、既読にならないとしたら、無視されて本当に読まれていない可能性は決して低くないでしょう。だとしたら、電話するか会いに行くしかないということになるはず。でも、それがうまくいった場合、あとでLINEの痕跡を見て相手が苦笑してくれたら、それがよい追い討ちになると著者はいいます。(202ページより)
『はじめての男の婚活マニュアル』と同様に文体は軽く、イラストも豊富。だから肩の力を抜き、リラックスして読み進めることができるはず。なかなか人に聞けない謝罪法を身につけるには最適な一冊だといえそうです。
(印南敦史)
- はじめての男の謝罪マニュアル
- 男の謝罪研究会秀和システム