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若者を追いつめる「2分の3成人式」の実態とは

「皆さんは30歳になりました。これからは中核社員として会社を盛り上げていかないといけません」

社長はそう言いながら、血の入ったグラスを社員に手渡した。この血のグラス、会社の保健師が会社役員全員から注射器で抜いて混ぜたモノ。渡された「30歳」の社員4人は一気に血を飲み干した。

これ、「2分の3成人式」のヒトコマである。近頃、30歳になった社員を奮い立たせようと「2分の3成人式」を執り行う会社が増えてきているという。

経営コンサルタントの働木鯛造氏は「2分の3成人式の目的」についてこう語る。

「社員の忠誠心をアップさせることにあります。30歳といえばようやく一人前の会社員になった時期。20代は会社から投資されて成長する時間。30代は利益を出して会社に恩返しする時間。これからが本番です」

昨今の人手不足で、30歳前後が「転職の花」だという。

「即戦力で利益も出せて、人脈もある。そんな30歳がいちばん他社に取られやすい。そこで『成人式』をすることで、初心に返ってもらう」

気になる「2分の3成人式」の中身だが、会社幹部や上司の血を飲む「血飲式」のほか、就職活動時の苦しみを思い出すため、社長に10分間、全力で抱きしめられる「だっこ式」や、月曜日から金曜日まで不眠不休、徹夜で仕事をする「成人マラソン」などが一般的だ。

「2分の3成人式」をむかえたAさん(30)は、成人式の感想をこう語る。

「社長の血がのどを下りていく感覚がたまりません。会社と自分が一体化する。恍惚さえ感じる。これからも会社のために命を懸けていこうと思います」

取材したこの会社では、今後は「10分の11成人式」も開催したいと人事担当は言った。

「内定式で学生に血を飲んでもらう。社長と義親子になっていただく」

今後も、「成人式」から目が離せない。