ついったのたいむらいんを見ておったら、カレツキの『階級闘争と国民所得の分配』の内容を思い出したので
仮定と前提
いち:投資財生産部門(第1部門)、しほん家消費財生産部門(第2部門)、賃金財生産部門(第3部門)から構成
さん:ろうどうしゃは、貯蓄しない
よん:しほんかの消費、投資は過去の意思決定により決定、つまり今期の投資と消費は所与
各部門の産出量の価値 Yi 各部門利潤Πi 各部門の賃金Wi (i=1,2,3)
Yは粗国民所得、Πは総利潤、Wは総賃金
各部門の産出量の価値は
Y1=Π1+W1 (1)
第2部門(しほんかしょうひざいせいさんぶもん)
Y2=Π2+W2 (2)
となります。
第3部門の産出量の価値は、労働者は貯蓄しないという仮定の下では、労働者の支出額に等しいので
Y3=W1+W2+W3 (4) が成立する。
(3)と(4)から、
Π3=W1+W2 (5)
Y1+Y2=Π1+Π2+W1+W2
(5)式<Π3=W1+W2>を考慮すると、
Y1+Y2=Π1+Π2+Π3
Y1+Y2=Π (6)
この式は、経済全体の利潤額が、第1部門、第2部門の産出量の価値に等しいことを意味する。(P=I+C のが有名だろうか)
そして、利潤は、過去の資本家の投資と消費に関わる意思決定により決定されるということも意味する。(第1部門と第2部門の雇用量、産出量も過去の意思決定で決定)
「投資量と資本家の消費は考察される短期期間に先立ってなされた決意によって決まって」いるというわけ
カレツキは、うえのような議論を踏まえ、「賃金率が上昇する場合には、賃金財への支出増と投資および資本家消費への支出減に伴った、資本設備の再構成という点が、いっそう高価になった労働に資本が代替される結果として失業が一段と高くなる」みたいなのに、反論していく。
まずは、全部門で賃金が⊿Wだけ増加したとしよう。各部門の価格は変化しないと仮定。賃金の上昇する割合をαで表すと、第1部門と第2部門の合計した賃金の増加分は α(W1+W2)となる。価格が不変なので、この二つの部門の利潤は、減少することになる。
他方で、第3部門はα(W1+W2)分だけ利潤が増加することになる(産出量が増加)。結果、第1部門、第2部門の利潤の減少は、第3部門の利潤の増加によって相殺されるので、総利潤は以前と変わらない。したがって「利潤から賃金への絶対的シフトはまったく生じ」ないことになる。
今までは価格が変わらない、と仮定してきたが、カレツキは「事実であるとは思われ」ず、「価格は賃金上昇の影響を受けてむしろ上昇するだろう」という(価格が変わらないという仮定は、「賃金上昇の分だけ利潤から賃金へのシフトがあるとする理論に沿うもの」で、上記の結論(総利潤不変)は、「この理論に対する帰謬法となっていた」そうで)。
価格が上昇した場合はどうなるのか。カレツキは、完全競争市場、寡占市場それぞれについて論じていくわけであるが、今日は疲れたのでこのあたりでやめる。
さんこーぶんけん
當間清光『カレツキの分配理論(2)』
根井雅弘『現代経済学講義』