大学入試が大きく変わろうとしている。一般入試にもAO(アドミッション・オフィス)方式を取り入れて、「脱・ペーパーテスト」へ向かうという動きだ。海外の有名大学ではAO入試制度が一般的で、日本の大学入試もこれに近づく流れだろう。しかし、AO方式にすれば本当に妥当な選抜ができるのか疑問が残る。上手くいくヒントは私立名門中学入試にあるようだ。
■現在の小6から大学入試制度が大きく変わる
現在の小学6年生が大学受験に挑むときから、大学入試制度は大きく変わることになりそうだ。2021年度入学希望者からセンター試験が抜本的に改革されることは周知の通り。さらに中央教育審議会で大学入試改革を議論している高大接続特別部会が2014年10月10日に示した「答申案取りまとめに向けた要点の整理」[注]では、センター試験の抜本的改革は大学入試改革の一部に過ぎず、本丸は「各大学のアドミッション・ポリシーに基づく大学入学者選抜の確立」であることがくり返し強調されている。
「アドミッション・ポリシー」とは、直訳すれば「入学許可方針」。「我が大学ではこのような人物を求めている。よってこのような選抜を課す」という表明である。具体的な選抜方法としては、「小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション(中略)などを活用することが考えられる」とある。要するに「脱・ペーパーテスト」。できる限り一般入試もAO(アドミッション・オフィス)方式、もしくはそれに類する方式にしようじゃないかということだ。この流れに先行するように、東大と京大は2016年度から一部で推薦入試を導入することを発表している。
もともと海外の有名大学では、そのような入試制度が一般的であるし、全体の方向性として、この改革に私は賛成だ。しかし一方で、やや気になることもある。「脱・ペーパーテスト」が実現すれば、本当にアドミッション・ポリシーに基づいた大学入学者選抜が可能になるのだろうか。何かが足りない気がする。
入試の形式さえ変えれば、良い選抜ができるようになるといった安直な発想は危険ですらあると思う。逆にペーパーテストでも、アドミッション・ポリシーに基づいた選抜にある程度成功している例もある。東大や京大はその良い例だと思うし、もっとわかりやすいのは、私立名門中学入試かもしれない。
■中学入試問題は学校からのラブレター
9月まで本コーナーで連載していた「入試問題でわかる 名門中学が求める子ども」をもとに、先日、拙著『名門中学の入試問題を解けるのはこんな子ども』(日経BP社)をまとめた。私立名門中学が入試問題に込めている思いを読み解くという趣旨の本だ。
中学入試においては、ほとんどの場合ペーパーテストによって合否が決まる。しかし知識を詰め込むだけで合格できると思ったら大間違い。各校の入試問題をよく見てみると、そこにまさしく各校のアドミッション・ポリシーが感じられるのだ。
武蔵高等学校 中学校
たとえば私立武蔵にはもともと「入試問題は教育観の表明である」という思想がある。戦後の学制改革の混乱の中、小学校教員たちに対し、入試問題を開示・解説して回ることで、教育理念を説明し、優秀な生徒を集めた。中でも「理科」の「おみやげ問題」は名物だ。問題用紙と解答用紙とともに封筒が配られる。中には磁石やねじなど、身近な“もの”が入っている。それに実際に触ってみて、「気づいたことを書け」というような問題が出されるのだ。武蔵の教育理念である「自調自考」を具現したような問題である。「で、結局どういう結論になるんですか?」と答えを急ぐような子どもは武蔵には合わないらしい。
入試、受験、中学
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