「デジモンと育った」…なぜメキシコは「日本のホーム」になったのか、W杯のスタジアムを埋め尽くした「日本っぽいもの」たち
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サッカー日本代表が20日(日本時間21日)、チュニジアを大差で退けた、FIFAワールドカップ通算1000試合目となったメモリアルマッチ。この歴史的な舞台になったメキシコ・モンテレイのスタジアムは、さながら日本のホームのように声援がこだました。なぜ、メキシコ人はあそこまで日本人を応援していたのだろうか。現地で話を聞いてみた。(デジタル編集部 古和康行)
サッカー日本代表はメキシコ・モンテレイでのチュニジア戦を終えた翌21日、活動拠点の米テネシー州ナッシュビルへ戻った。
モンテレイ国際空港からナッシュビルまで日本代表チームはチャーター機を利用し、所要時間は4時間。一方、記者はというと、米ミシガン州のデトロイト経由。ほとんど同じ時刻にモンテレイを出発しながらも、丸一日がかりの移動だった。随分と遠回りな気もしたが、そもそもW杯取材の前に飛行機にすらほとんど乗ったことがない記者には、よく分からない。
日本はチュニジアを4-0で破り、1次リーグ突破に大きく前進した。第2戦を終えて、F組で2位。総得点でわずかに日本を上回る首位オランダは次戦で、チュニジアと対戦する。順当にいけばオランダがチュニジアに勝つ可能性は高く、オランダは1位通過の最有力候補だ。日本がオランダに次ぐ2位で決勝トーナメントに進んだ場合、残りの試合は全てアメリカで行われる。だから、チュニジア戦が日本代表にとってメキシコでの“ラストマッチ”になる可能性は十分にある。
あふれる「日本っぽいもの」
モンテレイスタジアムで驚かされたのは、メキシコ人の親日ぶりだ。日本代表のユニホームだけでなく、Jリーグのチームのユニホームを着ている人もいる。サッカーにとどまらず、大谷翔平や今永昇太ら日本人大リーガーのユニホームにそでを通したファンや、人気マンガのキャラクターや力士のコスプレ姿で現れる人も。なにかしらの「日本っぽいもの」を身に着けて、お祭り騒ぎを繰り広げていた。
「ハポン?」
試合開始前、入場を待つ人の列に並んでいると、幼い少年が声をかけてきた。ギエルモ・カランサ・エストラーダ君(13)も日本の応援に来たらしい。「ゴジラをきっかけに日本に興味を持ちました。それ以来、何度も日本代表の試合を見ています」。オランダとの初戦もチェックしていたようで、「日本はオランダ戦でも素晴らしいパフォーマンスを発揮していて、大会でも活躍してくれると思います」と力強く話した。
ギエルモ君がゴジラをきっかけに興味を持ったように、モンテレイの街には日本のキャラクターがあふれていた。正規の販売ルートで流通しているものかどうかは分からないが、呪術廻戦や鬼滅の刃、ポケモン、サンリオ系のキャラクターなどのグッズが山のように店先に並ぶ。この街の人が日本にかなり好感を抱いていることは間違いない。
ハチマキを巻き、日本のユニホームを着て応援に訪れていたダニエル・ゲバラさん(31)は「日本とメキシコは共通点が多い。太平洋の風景を共有しているし、僕自身も幼い頃から日本の文化とのつながりを感じてきた」と明かし、「私はポケモンやデジモンと共に育ってきた。メキシコ人にとって日本のカルチャーはともに成長してきた存在なのです」と熱っぽく語った。
どこもかしこも「ハポン」
スタジアムでは、メキシコの緑色のユニホームと日本の青いユニホームが目立つ。異様なまでに日本を熱烈に応援する彼らは、チュニジアのファウルに率先してブーイングを浴びせ、応援歌を熱唱し、スタンドでのウェーブまで始める。ハイドレーションブレイクによる試合の中断に大ブーイングをしたかと思えば、メキシカンな音楽には即座に反応し、上機嫌で大合唱していた。日本にとってはホームさながらの盛り上がりだったが、チュニジアサポーターが少し気の毒に思えるほどだった。
在メキシコ日本大使館によると、両国の交流は400年以上の歴史を持つ。1609年にメキシコ出身のフィリピン臨時総督を載せた船が千葉県沖で座礁した際には、臨時総督が地元住民によって救出され、メキシコまで帰還したという経緯がある。
日本のキャラクターグッズをふんだんに身に着けて、日本代表を応援していたファン・エスコベド・ガルシアさん(30)は「日本は友好的な国で100%素敵だ!」と話した。さらに驚いたのは、スタジアムからホテルへ戻るライドシェアの車中、日本の音楽グループ「BE:FIRST」の音楽が流れていたことだ。運転手いわく「僕のお気に入りのプレイリストさ!」とのこと。どこもかしこも「ハポン」なのだ。
日墨400年の歴史とポップカルチャーが紡いだ、太平洋の反対側に広がるもう一つのホーム「メキシコ」。彼らの情熱がサムライブルーを後押ししたことは、間違いない。ビバ、メヒコ。
プロフィル
古和康行(こわ・やすゆき) 読売新聞デジタル編集部記者。2013年入社。中部支社編集センター、岐阜支局、社会部を経て現職。「読売新聞オンライン」を中心にウェブ記事の取材・執筆・編集を行う。これまでにスケートボードやダンス、アイドル、ヒップホップなどストリートカルチャーを取材してきた。メキシコでの取材が不安だったが、「オラ」「グラシアス」「アディオス」と全力の笑顔だけで乗り切った自分に驚いている。