若者の「NISA貧乏」なぜ…将来に不安 食費など抑える

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 若者の間で資産運用への関心が高まり、毎月の給与から「先取り」で投資に回す若者もいます。ただ、将来不安を背景に投資を優先するあまり、必要な生活費とのバランスに悩む声もあります。無理なく資産形成を続けるには、何に気をつければよいのでしょうか。(津田知子)

先取り投資

大阪府守口市の女性は、表計算ソフトで家計管理を徹底して投資資金を確保している(本人提供)
大阪府守口市の女性は、表計算ソフトで家計管理を徹底して投資資金を確保している(本人提供)

 大阪府守口市の会社員女性(30)は5年ほど前に投資を開始し、毎月の給料が振り込まれた時点で一定額を投資に回す「先取り投資」を徹底している。月約18万円の手取りのうち、毎月5万円をNISA(少額投資非課税制度)の「つみたて投資枠」などで運用している。

 女性は「自分が高齢者になる頃は年金制度がどうなるのかわからないし、将来、子供ができれば教育費がいくら必要なのかも見通せない。いまのうちにちゃんと運用して備えるしかない」と話す。食費を抑えるために週末に作り置きし、会社の飲み会は1次会で帰るなどしてお金を捻出している。

投資と現預金のいずれかに偏ると様々な影響が出る
投資と現預金のいずれかに偏ると様々な影響が出る

 若年層の資産運用への関心は高まっている。金融経済教育推進機構(J―FLEC)が3年ごとに行う「金融リテラシー調査」によると、18~29歳で投資信託を購入したことがある人は2016年時点の9・6%に対して、25年は28・7%と約3倍に増えた。

 24年に新NISAが始まったことに加えて、物価が上がると、現金の価値が目減りしていく。このため、将来への不安を抱えた若い世代を中心に、資産を少しでも株や投資信託で運用する人が増えている。

 ただ、どのくらいの金額を投資に回すのかは難しい問題だ。中には生活や趣味、友人との交際などに必要なお金を過度に削ってまで投資に回す「NISA貧乏」と呼ばれる若者も現れている。

 今年3月の衆議院財務金融委員会では、野党議員が片山さつき財務相に対し、「NISA貧乏という言葉、聞いたことはあるか」と質問。片山氏は「(雑誌の)記事を見て、ちょっとショックを受けた。資産運用だけでなく、最適な毎月の収入の使い方も金融教育に入ってくる部分だ」と述べ、「NISA貧乏」に注目が集まった。

自己投資も大切

収入を適切に配分するイメージ
収入を適切に配分するイメージ

 老後資金のためにと、24年8月からNISAで月3万円の積み立て投資を始めた東京都瑞穂町の会社員女性(33)は「投資で資産が増えていくのは楽しいし、将来の安心材料なのでやめたくないが、今の楽しみを削ってまでやることなのかは、正直、わからない」と打ち明ける。

 女性は元々、好きなアイドルグループを応援する「推し活」が趣味だったが、投資のために昼食を500円に抑え、服の購入も控えるようになり、好きなグループの公演も見送ることが増えたという。

 投資に過剰に資金を充てすぎると、最悪の場合、水道代や電気代といった生活費が不足したり、病気やけがなどの急な出費に対応できなくなったりする恐れがある。

 お金が足りなくなって、積み立て投資が中断するようなことになれば、定期的に一定額を投資することで、自動的に価格が高いとき買う量が減り、価格が安いときにたくさん買う形となる積み立て投資の強みも失われてしまう。

 インフレに備えるには、ある程度の資産運用は必要とされる。それでも、資格取得や学び直しといった将来のキャリア形成のために必要なお金が限られ、家族や友人と旅行に行くといった貴重な機会を失えば、豊かな人生のためという観点からは本末転倒となる面もある。

 景気が長期で低迷すれば、保有資産の価値が下落したまま、なかなか元の水準まで戻らず、お金が必要になった際に足りなくなるといった恐れもあり、過剰な投資には注意が必要だ。

 第一ライフ資産運用経済研究所の てい 美沙主任研究員は、「スキル向上など自己投資に努めることで、収入が増えて結果として投資の原資を増やすことにつながることもある。バランスよく投資をしていくためにも、投資にどの程度の資金を投入するかは、日常生活やキャリアプランも踏まえてしっかり考える必要がある」と話している。

目安は収入の10% 預貯金も重要

 投資に充てるお金はどのくらいが適当なのか、1級ファイナンシャル・プランニング技能士で、個人向け資産運用サービス「ウェルスナビ」のセミナー講師を務める小松原和仁氏=写真=に話を聞いた。

 一般的に、毎月の収入の10%を投資に充てるというのがひとつの目安になる。手取りが30万円なら3万円の計算だ。収入の20%を充てている場合は高水準となる。

 資産のある人はより多くを投資に充てるのも手だが、預貯金がなく、カードローンなどで借金もあるという人は、NISA(少額投資非課税制度)での投資よりも、まずは返済と預貯金を優先するべきだと考えている。

 投資は資産価値が下落するリスクもある。投資を始めるのは、生活がしっかり回り、けがや病気などに備えた「生活予備資金」がある程度たまった状態の方が安心だ。生活予備資金は、おおよそ月収の3~6か月分と考えている。最低でも月収の1か月分は確保してから投資を始めてほしい。

 2年以内に必要なお金も確保したい。子供の入学費用や住宅購入時の頭金などがこれにあたる。投資して相場が下落すれば、必要になった時期にお金が足りなくなる。急な出費でNISAの資産を取り崩すような事態は避けたい。

 「若いうちは経験にお金を使え」などとも言われる。NISAのために家族で過ごす体験やスキルアップのための自己投資など現在の選択肢を減らしてしまうのはもったいない。投資をする際は、現在の充実と将来の備えのバランスを取る意識を持ってもらいたい。

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