旧中学校の校舎を職業訓練や宿泊に活用、卒業生らが結婚式も挙げるようになり…「地域にとって特別な場所に」
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14年前に閉校した鹿児島県曽於市立財部北中の校舎を再生した「たからべ森の学校」。職業訓練施設として農業の担い手らを育成し2025年度までに400人以上が巣立った。運営するホームページ制作会社「サイバーウェーブ」(曽於市)は宿泊やイベントなども手がけ、年間約2000人が訪れる。
同中は12年3月に閉校した。市は跡地活用を目指して事業者を公募。手を挙げた同社が選定され、鉄筋2階建ての校舎などの跡地1460平方メートルを市から無償で貸与された。
代表取締役の小野公裕さん(52)が起業前に職業訓練施設に通っていた経験があったことから、13年5月に職業訓練施設「たからべ森の学校」として開校。農業人材の育成を求める声に応え、近くの農地を借りて農業の実習を行うほか、調理や食品加工、パソコンなどの実技を指導し、「食農ビジネス人材」の育成を目指す。
「地域住民が気軽に足を運ぶことのできる場所づくり」(小野さん)も目指し、16年には職員室だった部屋に実習で育てた野菜を使った料理を提供するレストランをオープン。また、交流人口の拡大につなげようと校庭で夜空の下で映画を上映する「星空映画館」などのイベントを開催し、市内だけでなく、県外からも多くの人が足を運ぶようになった。
「学校に泊まることができるようにすれば面白いかもしれない」
18年から始めた「星の宿」を思い立ったのは、小野さんの好奇心からだった。美術室や保健室だった部屋を客室に改装したほか、内風呂や五右衛門風呂を整備。「キャンプをしてみたいが、外で寝ることに抵抗がある」との声を受け、教室にはグランピングスペースも設けた。
スタッフの中には「夜の学校は怖いというイメージがある」と懸念もあったが、今では年間約1000人が利用する人気スポットに。小中学校の部活動などの合宿での利用も多い。校庭や体育館が使えることに加え、宮崎県との県境に位置し、大会が開催されることの多い霧島市にも近い地の利があることが選ばれる理由だという。
22年には財部北中を卒業した新郎と森の学校で学んだ新婦の結婚式と披露宴が、ここで行われた。小野さんは「地域の人にとって特別な場所になったと感じた。あの日の光景は忘れられない」と振り返る。
「小さい頃は毎日のように足を運んでいた学校でも、大人になると『非日常の場』に変わる。ここでしか得られない体験ができる場所であるよう、チャレンジしていきたい」。地域や足を運ぶ人たちに喜んでもらうために取り組みを続ける。(横峯昂)