万博などに向け購入した中国製EVバス190台、路線バスに転用できず購入代金の回収も不透明に
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大阪メトロは、昨年の大阪・関西万博などに向けて購入し、不具合を受けて継続使用を断念した190台のEV(電気自動車)バスについて、販売会社に代金の返還を求めている。しかし、販売会社は民事再生法の適用を申請。大阪メトロが求めた契約解除についても争う姿勢を示しており、購入代金の回収は不透明な状況となっている。(猪原章、大槻浩之)
契約解除「争う」
「安全性については、納入手続き後も確認、改善を進めてきた。契約の解除は法的な根拠を欠く」。EVバス開発・販売会社「EVモーターズ・ジャパン」(EVMJ、北九州市)は先月30日付で発表した文書で、大阪メトロからの契約解除について、有効性を争う方針を明らかにした。
大阪メトロはEVMJから中国製のEVバス190台を購入。うち150台は万博で使用し、閉幕後は路線バスなどへ転用する予定だった。
ところが万博開催中の昨年4月と7月、車両が壁や縁石へ接触する事故が起きた。国土交通省はEVMJに、全国で納入した317台(当時)の点検を指示。同10月、不具合が見つかった113台の運行停止と修理を求めたことを明らかにした。EVMJは一部車種について、ハンドル操作時にブレーキホースが車体に接触し、ブレーキが利きにくくなる恐れがあるとしてリコールを届け出た。
大阪メトロは継続使用の可否を判断するため、今年に入り、6台を抽出して独自の点検を実施。車軸がずれないように支える部品が破断する、別の欠陥が見つかったという。3月末、「安全性を確保できる見通しが立たない」として全車両の使用断念を発表。EVMJに契約解除を通知し、EVバスの引き取りや購入代金の返還などを求めた。
補助金40億円以上
大阪メトロは「非開示情報に当たる」として購入金額を公表していないが、大阪市の試算では、万博で使われた150台分で計約75億円に上る。
読売新聞の取材では、40億円以上が国と大阪府・市からの補助金で賄われた。補助金は万博後も路線バスなどで使用することが前提だったため、大阪メトロは補助金の返還に向けて国などと協議する方針だ。
ただ、購入代金を回収できるめどは立っていない。EVMJは先月14日、大阪メトロの契約解除通知などで「資金繰りが維持できなくなる懸念が生じた」とし、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、即日受理された。負債総額は約57億円。
EVMJによると、今後は支援企業を募って経営再建を図るという。大阪メトロの要求について、EVMJの広報担当者は取材に「民事再生手続きにおいて対応する」と回答した。
「市民の損失」
EVMJは2019年創業の新興企業だ。「なぜ設立して間もない会社から190台も購入したのか」。先月14日の大阪メトロと大阪市議会との会議では、市議からそんな質問が飛んだ。
大阪メトロによると、EVバスは22年に導入を決定。購入先を選ぶ際、〈1〉走行中の給電などの実証実験に対応できる〈2〉自動運転などの車両データを取得できる〈3〉量産体制がある――という条件を設定した。当初は国内メーカーからの調達を検討したが見つからず、条件に合致したEVMJが浮上したという。
会議では、大阪メトロの堀元治常務取締役が「試走などでできるだけ操作性に問題がないかを確認したが、結果としては十分に(チェックが)機能しなかった」と説明した。
大阪市内の大阪メトロの敷地には、行き場を失った約100台のEVバスが並ぶ。18年に市営地下鉄の民営化で誕生した同社は、100%株主である市に配当金を納めている。市議の一人は「EVバスの問題は市民の損失だ」と指摘する。
市幹部は読売新聞の取材に「市は大阪メトロの経営には口出ししておらず、業者選定にも関与していない」と話している。
「事業者選定 経緯検証を」
中村智彦・神戸国際大教授(地域経済学)の話 「巨額の補助金を交付した国や府・市は第三者委員会を設置するなどして、事業者選定の経緯を検証するべきだ。大阪メトロの100%株主である市は『知らなかった』では済まされず、(大阪メトロの)経営陣の責任を追及する必要がある」