思い出の廃校舎、釣り堀にカフェに…再活用でにぎわいふたたび
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過疎化や少子化などを背景に廃校となる公立学校は、全国で毎年300校前後に上る。新年度が始まり、校舎からわいわいとした声が聞かれなくなった地域では、住民たちが寂しさを感じていることだろう。一方で、人々が集う新たな場所として命を吹き込む動きも広がる。カメラに収めようと各地を訪ねた。 (編集委員 大久保忠司)
巨大釣り堀
旧体育館に設けられたのはなんと、五つの釣り堀水槽。4月の週末、記者が足を運ぶと、釣りざおを手にした家族連れらが「きたっ」「よし」「やった!」と声を響かせてニジマスを釣り上げていた。
2021年春に閉校した兵庫県三木市の旧
廃校舎を生かすメリットはやはり、既存の建物を利用できること。直径5メートルの大水槽2個の重さは各20トン、3メートルの小水槽3個は各4、5トン。床下などを鉄骨で補強したが、建物を新設するより費用は抑えられたという。釣りのビギナーにとって、天候を気にせず安全に楽しめる。釣った魚は塩焼きや唐揚げに調理して味わうことができる。
同社課長の市橋拓也さん(46)は改修工事の時から校舎を見守ってきた。「初めは閉校を残念がる地元の人たちと距離感もあったけれど、今ではよく遊びに来てくれる。周辺の他の店などと連携して人を呼び込み、地域を盛り上げたい」と意気込む。
里山カフェ
京都府福知山市は「福知山廃校マッチングバスツアー」を実施するなどして周知に力を入れ、廃校になった16校のうち10校が活用され、うち8校を民間企業が占める。
その一つが、20年に閉校した旧佐賀小学校。市内に本店を置く和洋菓子製造販売の足立音衛門が翌年、菓子工房やカフェ、ショップなどが入る「里山ファクトリー」をオープンし、今では年間2万人が訪れる人気スポットになった。校庭は近所の人が遊べるよう開放し、消防団が訓練などに使用することも。店のスタッフたちは地域の祭りなどにも積極的に参加している。
AIセンター
まちを挙げて新産業を誘致したケースもある。
3月3日、香川県綾川町の旧綾上中学校で開所式が開かれたのは「綾川町データセンター」。IT系新興企業「ハイレゾ」(東京都)が110億円を投じ、体育館下の駐輪場部分で整備を進めてきた。利用が急拡大する生成AI(人工知能)関連のセンターで、今夏の本格稼働を目指す。住民が自由に集える交流スペースなどの整備も予定している。
式典で前田武俊町長は「多くの人と地域に愛された
地域のシンボルである学校が、人々の工夫と熱意で再出発する。20年、30年と活気をもたらすことを願いたい。
現存の7割5661校で
文部科学省の2024年5月時点の調査では、廃校になった公立小中学校や高校などは04年度~23年度の20年間で8850校(分校を含む)に上る。19年度以降の5年間でみると、毎年298~384校が廃止されている。
8850校のうち校舎などが現存しているのは7612校で、その7割超にあたる5661校が再活用されている。体育施設や教育・文化施設、民間企業や創業支援向けの施設、福祉・医療施設などが多い。企業の場合、校舎などを自治体から賃借するケース、買い取るケースがある。