地域住民と学校の連携をより強くしたい。農家やJAなどが携わる協働活動の中に、積極的に農業体験を取り入れよう。子どもたちは体験を通して、命を育む農業がいかに大事な仕事かを理解し、国産農畜産物の価値が分かる大人になる。未来の担い手育成にもつながるだろう。
文部科学省は、保護者や地域住民などが一定の権限と責任を持って学校運営に参画する「コミュニティ・スクール」と、農家ら地域住民が学校のパートナーとなって、共に子どもを育てる「地域学校協働活動」を一体で推進する。
コミュニティ・スクールと地域学校協働本部の両方が整備されている学校は2025年度1万7481校と全体の5割。小・中・義務教育学校では6割を占める。地域と学校が、共に子どもを育てる機運をさらに高めたい。
特に推進したいのは、地域学校協働活動の中に農業を取り入れることだ。愛知県蒲郡市立蒲郡西部小学校は、1977年から校内で児童が特産のミカン栽培に取り組む。全校児童は49人。小規模校ならではのきめ細かい教育で、5年生は1年間、総合学習の一環でミカンの栽培から販売までを担う。栽培を助言するのは「みかん先生」と呼ばれる地域の農家。JA蒲郡市も糖度検査で協力する。土づくりにも力を入れ、竹尾公孝前教頭の勧めで、剪定(せんてい)枝や枯れ葉を堆肥にする「バイオネスト」に取り組む。
こうした積み重ねを経て、児童は剪定や摘果、マルチ、糖度、害虫などの知識を自然に身に付けていく。中には「将来は農家になりたい」「(農家をしている)お母さんとお父さんはすごいな、かっこいいなと思った」という声も出るほどだ。25年には、JA愛知中央会主催の「第2回あいち食農教育表彰」で最優秀賞にも選ばれた。だが、児童数の減少で、同校は来年3月の閉校が決まった。地域と学校が連携した農業教育の灯を消してはならない。
広島市安佐南区でも、社会福祉協議会や住民、PTAなどでつくる「LMO(エルモ)毘沙門台」が、JA広島市の支援を受けて昨年から毘沙門台小学校の児童と米を作る。「地域が協力することで子どもたちに故郷を思う心を育みたい」と瀬川龍男会長は期待する。これが協働の力だ。
地域の農家やJA、住民などが教育現場と深く関わることで、子どもたちの食や農業、環境問題への意識は高まる。温暖化や高齢化、担い手不足などの食や農業を取り巻く課題を「自分ごと」として捉える感性が養われる。成長する過程で壁にぶつかった時、自らで考え、突破していく力にもなるだろう。子どもたちの心に農の種をまこう。