教職員スト、転校相次ぎ生徒激減…和歌山南陵高が苦難越え春、4月には3年ぶりに新入生
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2022年に教職員による授業のストライキが起きた私立和歌山南陵高校(和歌山県日高川町)で3月2日、卒業式が開かれる。出席する3年生には後輩がいない。混乱に伴って生徒の募集が停止されたからだ。4月には新入生が3年ぶりに入学し、卒業生も新入生も新たな一歩を踏み出す。(和歌山支局 豆塚円香)
「君たちは自分で歩んでいく力を持っている。次の目標に向かって頑張ってや」
1月31日の退寮式で、同校を運営する学校法人南陵学園(静岡県菊川市)の甲斐三樹彦理事長(53)が、生徒たちをそう激励した。
同校は野球やバスケットボールが盛んで、全国大会への出場を目指し、遠方から入学して寮に入る生徒が多い。通信制の約40人を除けば、全日制の3年生18人のうち16人が寮生だった。
教職員による授業のストライキが起きたのは、22年5月のことだ。給与の未払いなどが理由だった。学校法人の資金繰りは苦しく、老朽化した寮では、トイレが雨漏りし、風呂場の湯船のタイルが剥がれた状態で放置された。全日制の3年生は入学当時、41人いたが、一連の混乱で半数以上が転校した。
「トイレは雨漏りでびちゃびちゃで、電気や水道もよく止まった」。大阪市出身で、野球部に所属していた3年の生徒(18)は振り返る。
そんな中でも、仲間と励まし合いながら野球に打ち込んだ。先輩がいた1、2年の夏の和歌山大会では、いずれも4強入り。昨夏は、3年生の部員わずか10人で臨み、3回戦まで進んだ。勝利した時、昨年6月に新しくなった校歌を歌った。「学校の雰囲気を変えよう」と、甲斐理事長が導入した「レゲエ校歌」だ。
〈 一歩前へ 今
手を
一歩前へ 今
夢
「何でレゲエなん」と少し恥ずかしかったが、今は「一歩前へ」という前向きな歌詞が好きになった。
大学に進学する大田さんは「大変だったけど、投げ出さず、一緒に頑張った仲間に感謝の気持ちでいっぱい」と語る。卒業式では、レゲエ校歌を思い切り響かせるつもりだ。
愛知県出身の生徒(18)は、所属していた男子バスケットボール部の同級生が学校をやめてしまい、涙を流したこともあった。部員は6人しかいなくなったが、昨年8月と12月には全国大会への出場を果たした。地元愛知の大学に進学し、プロのバスケ選手を目指すという。
「先が見えない不安に、一刻も早く卒業したいと考えていたが、諦めない心が身につき、今はどんな高校生よりも濃い3年間だったと思う。これから大変なことがあっても、乗り越えられる自信がある」
給与未払い解消、生徒募集再開
和歌山南陵高に今春、新入生が戻るのは、教職員への給与の未払いなどが解消し、生徒の募集が再開されたためだ。
解決に尽力したのが、昨年4月に就任した甲斐理事長だった。大分県佐伯市の経営コンサルタント会社代表で、南陵学園の営業部長として野球部などのスカウトを務めた経験があった。就任当時、給与の未払いや税金の未納などの総額は約2億7000万円に上ったが、自己資金や企業の支援で完済した。
静岡県が2022年7月と12月、私立学校法に基づいて出していた措置命令は、経営改善の取り組みが評価され、昨年11月末に解除された。生徒の募集が可能になり、学校側は、野球などで有望な生徒のスカウト活動を再開。今年2月に行われた全日制の前期入試では、鹿児島県や長野県などの約10人が合格した。3月の後期入試や通信制も含めれば100人以上の入学者が見込めるという。部活動は4月以降も続く見通し。
甲斐理事長は、寮の修繕に着手し、タイルの張り替えなどを実施。今後は、ドローンや情報通信関連の資格取得の支援に力を入れるという。「今の3年生が『新生南陵』の第1章で、春から第2章が始まる。期待に応える学校にしたい」と話す。