米国関税政策 東海の中小企業にも影響
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米国の関税政策は、東海経済を支える中小企業にも影響を及ぼす可能性が高い。金融機関の首脳や信用調査会社の担当者に、中小の現状や見通しなどを聞いた。
中小設備投資見直しも
あいち銀 鈴木武裕 頭取 入行して40年近く、銀行の営業担当として働いてきた。これまで、日本のバブル崩壊や米国のリーマン・ショック、世界的なコロナ禍などに見舞われたが、いずれ危機は過ぎ去った。各国の政策協調や医療の技術などで、ある程度は収束が予測できたと思う。
しかし、今回の米国の高関税政策の行方ほど、不透明なものはないだろう。米トランプ大統領が人為的に作り出し、彼の言動次第で世界経済の行方が決まってしまうからだ。中小企業への今後の影響を踏まえ、あいち銀行は4月3日、本店や支店に相談窓口を設けた。同10日には最大2億円の特別融資の取り扱いを始めた。
現時点で、取引先への影響はほとんど出ていないようだ。もっとも、自動車関連や流通業などの企業計約3400社(4月30日時点)に行った調査では、先行きに不安を抱く企業が多かった。50社ほどから、新たな融資の相談を受けている。
トランプ関税前、日本では、賃上げの機運を背景に経済を好循環にする流れができつつあった。しかし、今のままだと、また経済が冷えてしまう。心理的なダメージを受けた企業は、防衛に入る傾向があるためだ。実際、設備投資や将来の支出の見直しを考えている取引先が増えている。
特に愛知県では、25%の関税が上乗せされる自動車の部品メーカーへの影響が懸念されている。たとえば、トヨタ自動車が米国での現地生産を増やし、日本からの輸出を減らせば、ティア2(第2次下請け)など、あいち銀の取引先へのダメージは大きい。
あいち銀は今年1月、愛知銀と中京銀が合併して誕生した。新銀行では、融資規模の拡大や、専門知識を持った人材を活用できるメリットがある。あらゆる局面で、スピード感を持って、地域経済を支えていきたい。
すずき・たけひろ 1988年、中央相互銀行(現あいち銀行)入行。愛知銀刈谷支店長、同法人営業部長、取締役営業本部長などを経て今年4月から現職。愛知県出身。60歳。
自動車不透明感が再燃
東京商工リサーチ名古屋支社 嶺沢博徳 情報部長
東京商工リサーチが4月1~8日に実施した「トランプ関税」に対する調査では、東海3県の企業422社のうち相互関税が「プラス」と回答したのは全体のわずか0・4%(2社)だった。一方、「マイナス」の回答は63・2%(267社)に上った。全国集計の数値より10ポイント以上高かった。
我々が想定していたよりも、全国の数値を大幅に上回った。他地域より経営へのマイナスのダメージを懸念する企業が多いのは、輸出企業が多く、関税に敏感に反応しているためだ。自動車業界はコロナ禍の減産を経て増産傾向にあったが、再び不透明感が高まりつつある。
トランプ大統領は、日本などへの「相互関税」の全面発動を90日間停止している。企業の中には、その期間中は、新たな一手が打てないといった声もある。設備投資の停滞が懸念される。具体的には、金型製造などに使う工作機械の需要が減り、結果的に自動車生産などにも悪影響を及ぼす流れになりかねない。
相互関税への対応(複数回答)では、回答した59社のうち、「特になし」が57・6%と最多だが、「保有する原材料や在庫などを減らす」(11・8%)、「設備投資や拠点開設を取りやめる」(8・4%)なども多い。借り入れを減らしたり、今後の賃上げを見送ったりするとの回答もあった。
東海3県の2024年度の倒産件数は892件に上り、過去10年間で最多となった。飲食店などの小規模事業者を中心に、コロナ禍で業績が悪化した上に、エネルギー価格や原材料価格の高騰で倒産に追い込まれている。米国の関税措置で国内の商品やサービスが値上がりすれば、個人消費が落ち込み、経営体力がない小規模事業者の倒産が増加する可能性がある。米国の関税の影響は、製造業にとどまらない。
みねざわ・ひろのり 1998年、東京商工リサーチ入社。四日市支店長、津支店長などを経て、2021年6月から現職。愛知県出身。49歳。