大学の「女子枠」でリケジョ増えても働き方が一つなら女性科学者は増えない
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女性が安心して理系の道を進めるようになるには――。最近、いわゆる「リケジョ(理系女子)」と呼ばれる女性科学者が増えてきたと感じることが多くなりました。この前、とある学会で偶然隣に座った女子学生は、「将来どんな場所で働きたいか」「どんな人生を送りたいか」について熱っぽく語ってくれました。まだ20代前半なのに、科学者として進むライフプランを考えていて、圧倒されました。
職場でも若い女性技術者を目にすることが増え、会議の参加者が全員女性エンジニアだったこともあります。女性科学者を取り巻く風景は、確実に変化しつつあります。文部科学省の「科学技術指標2025」によると、2024年の女性科学者の数は18万3000人、科学者全体に占める割合は18.5%で、ゆるやかにではありますが増えています。
大学入試で「女子枠」は差別か?
ただ、経済協力開発機構(OECD)加盟国では最も低く、その背景には女性の理工系進学率の低さが指摘されています。そのため、多くの大学で理系学部に女子枠を設けたり、企業が積極的に女性を採用したりするなど、理系女性の人材育成を加速させています。
大学入試の女子枠を巡っては、性別で枠を設けるのは不公平という批判もあり、男性差別と反対する人も少なくありません。
ただ、理系への進学をあきらめる背景に、「女の子なんだから文系でいいんじゃないか」「女の子が修士や博士に行ったら婚期を逃す」といった、ジェンダーバイアス(性別による偏見)によるところが大きいことを考えれば、性差を見直すために何らかのてこ入れは必要なのかもしれません。
変化すべきは職場の風土や文化
2025年に初めて女性首相が、日本に誕生しました。出産後に仕事を続ける女性はもはや珍しくありません。男性の育休取得も進み、厚生労働省の発表では、2024年度の取得率は40.5%で、前年度の30.1%から大幅に上昇しています。
女性が働くための制度が整いつつある一方で、さらに変化が求められるのは、職場の風土や文化なのかもしれません。以前働いていたパリでは、子どものいる女性が管理職として働いている姿を、当たり前のように目にしました。残業や休日出勤をする人もいましたが、職場には長時間労働が美徳ではない雰囲気がありました。「働き方は一つではない」という前提が共有されていたように思います。
残業や出張が多く、長時間労働が当たり前だった日本人の友人は、「仕事は好きだったけれど、続けられるイメージが持てなかった」と転職に踏み切りました。30代は、中堅社員として責任ある仕事を期待されると同時に、結婚や出産、親の介護といった人生の転機を迎える時期です。家庭と仕事をてんびんにかければ、葛藤が生まれます。どちらかをあきらめるのか。どうすれば続けられるのか。
私自身も、男性社会の中でどう振る舞えばいいのかわからず、戸惑ったことがあります。そのとき、ある女性の先輩が「“みんなは”じゃなくて、“私は”『こうしたい』って言っていいんだよ」と教えてくれました。彼女の言葉がすとん、と腹落ちしました。身近に働き続けている女性がいることは、「続ける」という選択肢を現実のものにしてくれます。ロールモデルとして、少し先を歩いている人の存在は、それだけで心強いものです。
「女性が長く働ける職場」は、女性だけでなく誰にとっても働きやすい職場だと思います。仕事は人生のすべてではありません。合わなかったら、環境を変えることも、続けることも、どちらも「逃げ」ではありません。
そして、あなた自身が“私は”こうしたいと頑張っていれば、その姿に勇気づけられる後進がいます。社会はまだ変化の途中ですが、少しずつ前に進んでいるのを感じています。学会でたまたま隣に居合わせた彼女が、これからどんな選択をして、数年後、どこで働いているのか。活躍が楽しみです。(宇宙工学エンジニア ベルナドア美奈)
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