ミルクコーヒー、おいしさの秘密をこれでもかと表現したら…コンビニの代表商品に
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「甘い誘惑」「牛乳好きのためのミルク愛コーヒー」「その味わいにあなたは魅了されるはず」――。パッケージにちりばめられた甘い言葉の数々。千葉市中央区の乳製品製造販売会社が手がける、奇抜な見た目のミルクコーヒーが全国の消費者をとりこにしている。昨年には、大手コンビニチェーンのその年を代表する商品の10位に選ばれた。千葉発のチルド飲料が全国を席巻しようとしている。(柴田洋希)
商品は「ミルクの束縛 ミルクコーヒー」(500ミリ・リットル)。ファミリーマート限定で販売されている。価格は税込み248円。他社の同種商品に比べて割高だが、その分、質にはこだわっている。他社商品を大幅に上回る生乳75%を使用し、他は砂糖とコーヒーのみ。余計な物を入れないからこそ生まれるすっきりとした味わいが、女性や若年層の需要を掘り起こし、出荷本数は2年強で600万本を超えた。
手がけるのは、スーパーや学校給食にパック牛乳を卸している千葉市中央区の「古谷乳業」。
ヒットの裏には、発想の転換があった。
金谷敏事業開発部長によると、2023年4月から1リットル入りのパック商品を県内のスーパーで販売したが、「誰も気づかないくらい売れなかった」。販売はわずか約1年で終了した。
商品名もオーソドックスな「ミルクコーヒー」で、パッケージはパック牛乳のデザインを流用していた。「一目で魅力がわかり、手に取りたくなるパッケージにすればいいのでは」。大手企業が占める市場に切り込むためには、ありきたりなものでは埋もれてしまう。時代の先端を行くIT企業にブランド開発とパッケージデザインを依頼した。
受注したのは、ゲームアプリや広告・ウェブ制作などを手がける神奈川県鎌倉市の「面白法人カヤック」。同社にとって、実店舗で販売する商品に携わるのは初めてだった。
同社によると、おいしさの秘密が生乳であると知った社員が、店舗などで成分表を見比べることが癖になり、いわば「ミルクに束縛」されたことにちなんで商品名を考案した。
パッケージも、他社との違いを際立たせる工夫をした。ミルクとコーヒーが混ざり合う画像といった、視覚など「五感」に訴える従来の表現ではなく、文字で彩る戦略をあえて取った。
23年10月に県内のファミマで販売が始まると、1店舗あたり1日2、3本が売れ、保冷流通されるチルド飲料のトップレベルに。翌月には東京都の店舗に、さらに関東甲信越へと広がった。今は北海道と沖縄県を除く全国に拡大した。
ミルクコーヒーをきっかけに、カヤックとの共同開発も進み、現在のラインアップはミルクティーやヨーグルトなど5種類を数える。
昨年12月には、ファミマ店舗での新規発売やリピート率が高い商品から「今年の顔」を選ぶ「ファミマ大賞」の10位に選ばれた。ファミマのプライベートブランドが並ぶ中、唯一食い込んだ。ファミマによると、近年珍しい快挙という。
ファミマの商品担当者は「パッケージの衝撃で顧客の心を捉え、さらに味覚の評価も高い」と要因を分析する。「千葉でヒットしたところからあっという間に広がり、どの地区でも売れ続けている。非常に驚いている」と舌を巻く。
古谷乳業の金谷部長は「受賞によって認知度はさらに上がった」とほほえむ。ただ取り扱い店舗数でみると、ファミマの約60%という。金谷部長は「店舗を拡大し、消費者の心をさらに魅了したい」と意気込んでいる。