高市首相「奇襲解散」の狙い的中で大勝、それでも先に待つ地雷原と波乱のシナリオ
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衆院選は2月8日夜、投票が締め切られた。メディア各社の開票速報によると、自民と日本維新の会の与党は、勝敗ライン「与党で過半数(233議席)」を軽く超え、自民党は単独でも過半数を大きく上回った。首相指名選挙を行う特別国会は2月中旬にも召集される。高市早苗首相の再選はほぼ確実だ。(東京本社編集委員・吉田清久)
「高市人気」を追い風に
今回の衆院解散はまさに奇襲。戦後政治史に足跡を残す衆院選だった。
選挙準備がままならない野党は防戦を強いられた。無党派を中心とした「高市人気」はそれまでの自民党への逆風を一気に追い風に変えた。「郵政解散」(2005年)で圧勝した小泉純一郎首相の手法を想起させるものだった。お見事と言える。
もっとも選挙後、高市首相を待ち構えるのは危険な地雷原ではないか。各所で地雷が爆発する可能性があるのだ。
どんな地雷があるというのか。
国会で本格論戦、爪を研ぐ野党
特別国会は高市首相が就任して以来の本格論戦となる。野党から厳しい追及を受けるのは必至だ。
野党は選挙期間中から衆院解散を「大義のない自己都合解散」「ボロ隠し解散」などと批判してきた。高市首相はまずその釈明に追われる。矛先は旧統一教会問題、自らの政治資金問題などだ。
野党幹部が息巻く。
「選挙期間中に高市さんが『日曜討論』(NHK)を欠席したのは番組での追及を恐れたからだ。言い逃れのできない事実がある。今時、説明責任を軽視・回避するのは許されない」「経済対策、物価高対策を進めるといいながら衆院解散で2026年度予算の成立が大きくずれ込むことに対する説明はどうするのか」
れいわ新選組の大石晃子共同代表は、一連の疑惑を引き合いに「(日曜討論で高市首相に)かみついてきます。そんなことを隠して解散なんて許されへんぞ! とぶつけてきます」と「かみつき予告」していた。
気になるのは、「政治とカネ」や旧統一教会問題に関して、高市首相の身内しか知り得ない事実がいくつも週刊誌に漏れていることだ。いわゆる「文春砲」は今後も節目節目で炸裂し、高市首相は防戦一方となるかもしれない。
「犬猿の仲」に急接近、組閣・党役員人事は?
もう一つの地雷は「党内基盤のきしみ」だ。
1月30日、高市首相は衆院福岡11区に入った。落選中の武田良太元総務相の応援のためだ。高市首相は、街頭演説で武田氏と並んでマイクを握り、こんなエピソードを披露した。
「年末年始、武田さんのおかげで生き延びました。(首相公邸の近くは)買い物するところがない。そんな時に、武田さんは中華おせちや大好きな豚まんを届けてくれた。それで夫婦は正月明けまで生存できたのです」
武田氏は同じ福岡選出の麻生太郎元首相と「犬猿の仲」で知られる。高市首相はそんな武田氏に急接近したのだ。
麻生氏は高市政権誕生の立役者だ。しかし、今回の衆院解散は麻生氏にとってまさに寝耳に水。事前に相談がなかった。武田氏への肩入れと相まって麻生氏の高市首相への不信感が増すのは言うまでもない。
麻生氏だけでなく、党内で衆院解散の独断専行への不信が深まり、党内基盤のきしみが大きくなる可能性がある。選挙後の組閣・党役員人事をきっかけにきしみが表面化する可能性がある。
「二人羽織」維新との連立
維新との連立も地雷の一つだ。
本来なら政党の連立は「二人三脚」だが、維新との連立はちぐはぐな「二人羽織」ではないか。議員定数や政治資金問題で維新はさらなるハードルを課す可能性がある。緊迫する場面が起こりそうだ。
日本版トラス・ショックへの懸念
経済で言えば、「日本版トラス・ショック」への懸念が指摘されている。英国のトラス首相は、財源の裏付けに乏しい大規模な減税政策を打ち出したことで、国債暴落・通貨ポンド急落・株安という「トリプル安」を引き起こした。
高市政権の積極財政が、2022年にイギリスで起きた「トラス・ショック」のような市場混乱を招くのではないかというのだ。海外市場関係者やエコノミストから警戒する声が上がっている。トラス首相は在任わずか49日間で辞任した。
今回、指摘したのは今後起こりうる地雷の一部だ。高市首相は衆院選勝利の余韻に高揚している場合ではない。
勝つために短期決戦の仕掛けが奏功した高市首相だが、地雷を踏まないために何をすべきか慎重に考えるべきだ。でないと波乱のシナリオが動き出す。