大阪ダブル選挙で維新の街頭演説に激しい抗議活動続く、飛び交うヤジ・プラカード手に…参加者「SNS見て来た」
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日本維新の会の吉村洋文代表(前大阪府知事)が衆院選(8日投開票)に合わせて仕掛けた大阪府知事・大阪市長のダブル選の街頭演説で、激しい抗議活動が続いている。ヤジが飛び交いトラブルが起こりかねないため、陣営は演説場所の事前告知を控えるなど対応に苦慮している。
1日、堺市内の駅前で行われた街頭演説。吉村氏の言葉へかぶせるように、「うそつき維新」「組織的『国保逃れ』をするな」とヤジが飛んだ。
この日抗議に訪れたのは約30人。「ムダ選挙28億円金返せ」「万博未払い」などと書かれたプラカードやのぼりを手にし、周囲には抗議の様子をスマホで撮影してインターネット配信する人の姿もあった。
聴衆から「演説が聴き取りにくい」との声が上がり、陣営スタッフは抗議する人と聴衆の間でもみ合いなどのトラブルが起きないよう、警戒に当たった。同市堺区の会社員男性(42)は「批判するなら迷惑をかけない方法でやってほしい」と憤った。
ダブル選は高市首相が衆院解散を検討していると報道された直後の1月15日、吉村氏が、「大阪都構想」の3度目の挑戦について民意を問うとして実施を表明した。知事選は吉村氏と新人2人、市長選は横山英幸副代表(前市長)と新人4人が立候補。維新以外の国政政党は候補者を立てなかった。ダブル選の費用は計約28億円で、吉村、横山両氏が勝利した場合、任期は元のまま来年4月までとなる。
維新に対する抗議活動は、知事選が告示された1月22日から続いている。吉村氏が同日の演説で、選挙カーの上から「選挙妨害ですよ。静かに聞いてください」と呼びかける場面もあった。横山氏は混乱を避けるため、1月26日以降、SNSで街頭演説の告知を控えた。31日に告知を再開したところ、演説前から抗議する人が集まったため、直前に場所を変更した。
激しい抗議活動は衆院選でも、自民党の一部候補や参政党の街頭演説で行われ、「外国人差別」「デマを広げるな」などのヤジが飛び交っている。
集まってるのはどんな人?現場で尋ねると
抗議に集まっているのはどんな人なのか。公安関係者は「誰かが統率しているというより、ネット上の緩やかなつながりで個人が動いているようだ」と明かす。
記者が現場で参加者に尋ねた。
1日の吉村氏の演説会場を訪れた大阪市東住吉区の飲食店アルバイト女性(49)は「都構想には過去2回、反対してきた。3回目の挑戦は有権者をなめている」と話した。SNSで抗議が広がっているのを知り、1人で参加したという。
1月31日に堺市であった参政の神谷代表の街頭演説で抗議した大阪府八尾市の男性(49)は、維新の抗議活動にも参加しているという。掲げるプラカードはX(旧ツイッター)で配布されているデータをコンビニで印刷しているといい、「抗議活動に知り合いはゼロ。SNSを見て参加し、終わったら帰るだけ」と語った。
関東から訪れたという30歳代の会社員男性は、神谷、吉村両氏の演説会場に足を運んだ。過去には埼玉県で外国人に対するヘイトスピーチに抗議する街頭活動を行ってきたという。取材に「『抗議が怖い』という人がいれば申し訳ないが、仕方ない。表現の自由のぶつかり合いだ」と主張した。
表現の自由か選挙妨害か、専門家「場面見て個別判断」
表現の自由か、選挙妨害か――。演説中の抗議活動は過去にも議論になってきた。
憲法21条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」を保障している。
2019年の参院選では、演説中の安倍首相(当時)にヤジを飛ばした聴衆2人を北海道警が取り囲んで移動させる事案が発生。2人は不当な排除だとして提訴し、1審・札幌地裁は表現の自由が侵害されたと認定。このうち1人については24年、最高裁で道への賠償命令が確定した。
一方、公職選挙法では街頭演説を妨げる行為を「自由妨害罪」として規制している。最高裁判例では、聴衆が演説を聞き取ることが不可能になったり、困難になったりする場合が妨害に当たると判断されている。
24年の衆院東京15区補欠選挙では、他陣営の街頭演説に押しかけ拡声機で罵声を浴びせるなどした政治団体「つばさの党」幹部らが、同法違反容疑で逮捕・起訴された。
京都大の毛利透教授(憲法学)は「政治的な表現は特に手厚く保障する必要があり、警察の介入が抑制的になるのはやむを得ない。一方で、演説する人の表現の自由や、演説を聞く人の利益も守る必要がある。(規制は)演説が全く聞こえないような状況なのかどうか、実際の場面を見て判断するしかない」と話す。