高市首相、「財政収支」黒字化目標を単年度から数年単位へ見直し指示…「歳出が際限なく拡大」懸念も
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高市首相は22日、自身が議長を務める経済財政諮問会議を首相官邸で開き、政府の財政健全化目標の見直しを検討するよう指示した。国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の単年度黒字化を掲げた従来の目標を改め、歳出の自由度を高める狙いだが、財政健全化が遠のく懸念は強い。(中西梓)
減税織り込まず
高市首相は会議で「これまでの単年度ごとのPB黒字化目標の達成状況を見ていくという方針を、数年単位でバランスを確認する方向に見直す」との方針を示した。
PB黒字化の目標は、達成の先送りが繰り返されている。22日の会議でも、2026年度のPBが8000億円程度の赤字になるとの試算が示された。昨年8月時点の試算では、26年度に3・6兆円程度のPB黒字となり、1991年度以来の黒字化達成が見込まれていた。昨秋に策定した総合経済対策などで歳出が膨らんだ。
同時に示されたPB推移の見通しでは、実質経済成長率が1%台半ばで推移する「成長移行ケース」で、27年度に4・4兆円の黒字に転換し、35年度に16・3兆円の黒字となる。現状に近い実質0%台半ばの成長が続く「過去投影ケース」では、27年度に3・9兆円の黒字、35年度に6兆円の黒字を予測している。
しかし、この見通しは与野党が主張している消費税減税などの影響を織り込んでいない。財政規律が緩めば、想定を下回ることは避けられない。「数年単位のバランス」すら、確約された状況とは言いがたいのが現状だ。
歳出拡大懸念も
高市氏は会議で「債務残高対GDP(国内総生産)比を安定的に引き下げていくことで財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信認を確保する」とも述べた。
経済が成長すれば、国の借金負担は相対的に小さくなる。物価が上昇することでも、実質的な債務は軽くなる。債務残高対GDP比を指標にすれば、国の実質的な財政状況を把握することができるという考えに基づくものだ。
民間議員を務める第一生命経済研究所の永浜利広・首席エコノミストは、格付け会社の多くが債務残高対GDP比を重視していることなどを理由に、この指標を重視すべきだと主張している。22日には民間議員の連名で提出した資料で「成長すれば債務比率が下がるというメカニズムを、政策運営の中心に据えるべきだ」と強調し、首相の考えに同調した。
ただ、専門家からはこうした議論を疑問視する声も出ている。東京財団の森信茂樹シニア政策オフィサーは「単年度の黒字化目標というブレーキがなければ、歳出が際限なく拡大してしまう」と懸念する。
日本の債務残高は他国に比べて突出して高い。長期金利の上昇は、市場から財政再建を疑問視されていることの表れとも言える。市場の信認を得るには目標を早急に定め、着実に取り組む姿勢が求められる。
◆ 基礎的財政収支 =国債の元本返済や利払い費を除いた国の収入・支出バランスを示す指標。新たな借金に頼らずに政策的経費をまかなえているかを判断できる。