【特集】東大推薦入試で次々合格者を輩出する教育…小林聖心
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小林聖心女子学院中学校・高等学校(兵庫県宝塚市)は、昨年に続き今年も東京大学の推薦入試で合格者を送り出した。東大が2016年に推薦入試を導入してからの5年間に、同校から3人が合格し、それぞれ4年生、2年生、1年生となっている。3人に在校中の生活を振り返ってもらい、一般入試以上にハードルが高いとも言われる東大推薦入試で次々合格者を輩出する同校の教育の背景を探った。
奉仕活動の体験学習が、東大の志望動機につながる
経済学部4年生の東加奈子さんは、祖母の3姉妹、母親の3姉妹が皆、小林聖心出身だ。「娘が生まれたら絶対小林聖心に入れると決められていました」と笑う。東さんが印象に残っていることとして真っ先にあげたのは奉仕活動の体験学習だ。
「私は釜ヶ崎の支援活動を選択しました。中学では釜ヶ崎のホームレスの人のために帽子を編み、高校では炊き出しボランティアをしました」
東さんは炊き出しの時にホームレスの人たちの話を聞く中で、生活保護制度を絶対使いたくないと言う人が少なくないことを知った。「それまで私はホームレスの人たちはみんな生活保護をもらっているに違いないと思っていたのです」
興味を持った東さんは、この問題を高1の総合的な学習の授業で執筆する論文のテーマに決め、いろいろ調べ始めた。ちょうどその頃、ホームレスの支援活動をしているNPO法人代表の講演会が学校で行われ、実際の問題への取り組みを聞くことができた。「自分の中でホームレス問題への関心がますます高まり、それは結局、東大の推薦入試の志望動機にもつながっていきました」
「体験学習では、リアルな声を聞き、そこで学んだことを毎回振り返りノートに書きます。当時は大変だなあと思っていましたが、その繰り返しのお陰で自分の考えを深め、定めていくことが出来たと思います」。当時の振り返りノートは今でも大切に取ってあるそうだ。
英語の授業を通じ、世界の諸問題に視野を広げる
経済学部2年生の井置涼花さんは、「英語教育が特に印象深いです」と話す。「なかでも高2の必修科目の『Global Issues』は忘れられません。地球温暖化や環境問題、貧困や子供の人権などの諸問題の中から事例を取り上げて英語で学び、問題を分析し考察していくのです」
分からない単語をみんなで調べながら、問題に対して自分たちに出来ることは何か、どうサポートするかを考える。さらにそこから実際にボランティア活動へと発展していくこともあるという。「教科書で文法を勉強する、というような受験用の英語とは違い、世界に視野を広げる授業は非常に興味深く、英語を学びながらその内容も自分の血となり肉となるものでした」
授業だけでなく、校外のスピーチ大会に出場する機会があったり、学院祭でもディベートが行われたりする。「英語を究めたい生徒には英語に触れる機会が存分に与えられていたのも大きな特長でした」と、井置さんは振り返った。
卒業後も生き方の「軸」となる母校での学び
教養学部1年生の川崎莉音さんが「決して忘れられない」と話すのは、中3の時に模擬国連の同好会をつくり、高2の時に全国大会を目指した時の思い出だ。
「模擬国連は2人1組なので1学年下の後輩とペアを組みました。勉強や情報処理が得意な私と反対に、後輩はコミュニケーション能力がずば抜けて高かった。私は彼女に、それまで自分に欠けていたコミュニケーション力を鍛えられました。私が高校時代に一番伸びた力と言っていいくらいです。彼女と出会えたことは私のかけがえのない思い出です」
ちなみに川崎さんには「女子校ならでは」と実感した思い出もある。校外での大会に出場した際、終了後に椅子を片付けるよう指示があったが、すぐに反応して動いた女子は小林聖心の生徒だけだったという。「共学ではこういうことは男子がするんだなと新鮮でした」
小林聖心では定期試験の校内順位を生徒に知らせていない。「誰が誰の上だとか下だとか、分かる機会はありませんでした」と東さんは話す。「それよりも誰々は絵が得意だね、誰々はピアノが上手だね、と一人一人の個性を尊重し合っており、それがごく当たり前でした」。東大に入ってみて、成績を何よりも気にする学生や勉強が出来るか出来ないかを軸に人を判断する学生が多いことに驚かされたという。
「もちろん成績表はあるので自分の苦手を知り、次はこれを頑張ろうということはありますが、人と比べるという考えが全くありませんでした。卒業してから、私たちの学校生活はなんと恵まれていたのだろうと思いました」。そう語る東さんの言葉に、井置さん、川崎さんもうなずく。
井置さんは「小林聖心では土曜授業がないのでお稽古事にも時間を充てられたし、勉強だけに潰されることのない生活を送ることが出来ました。学校の実績のための受験を勧めるのではなく、それぞれに合った進路選択を支援してくれました」と話す。
また、井置さんは東大に入学した時の印象について「周りの8割は男子で、初めはその景色に圧倒されましたが、それでも自分の意見をひるまずに堂々と言えました。小林聖心時代に性差を意識しないでのびのびと自分の意見を発言してきたからなのではないかなと思います」と話す。
東さんは、就職活動中にも小林聖心での学びが自分の中に軸としてあることに感謝したという。「小林聖心ではミッションの話を聞く機会が多かったと思います。もともとは神様の教えを告げ知らせるという意味なのですが、自分が社会でどんな使命、ミッションを持っているかということを考えさせられる授業が多かったです。就職活動でも自分のミッションは何だろうと考えて活動し、第1志望の広告業界に進むことが出来ました。常に自分は社会でどういう使命を持つか考えるという小林聖心の教育は、自分の中にしっかりと根を張っていると思います」
川崎さんも「小林聖心には全体的な空気感として常に弱者を見捨てない精神がありました。社会問題に触れる授業だったり、体験学習だったり、機会あるごとに、弱者を絶対
東京大学は推薦入試のアドミッションポリシーの中で、期待する学生像について「入学試験の得点だけを意識した、視野の狭い受験勉強のみに意を注ぐ人よりも、学校の授業の内外で、自らの興味・関心を生かして幅広く学び、その過程で見いだされるに違いない諸問題を関連づける広い視野、あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人」と位置付けている。
3人の在校中の話からは、いたずらに学力を競うことなく、自分の生き方を見つめ、社会にどう貢献していくのかを考え、その上で必要となる能力を磨き、積極的に学びを広げていく様子がうかがわれた。これは確かに東大推薦入試のアドミッションポリシーに適合するものだろう。また、こうした3人の姿勢は、学校生活の日々で当たり前のように受け止めていた教育が下支えしていたことも疑えないところだ。
「より良い社会を築くことに貢献する賢明な女性の育成」という同校の教育理念は、日々の教育の中で、この3人のOGだけでなく、多くの生徒たちの確かな未来を育てているようだ。
(文:池野みのり 写真提供:小林聖心女子学院中学校・高等学校)
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