万博の大屋根リング、参加国から解体惜しむ「Save the ring」コール…「200メートルだけならこんな見た目」「エッフェル塔の下半分だけ残すようなもの」
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一部で保存の要望が出ている大阪・関西万博のシンボル・大屋根リングについて、参加国からも解体を惜しむ声が上がっている。半年間の会期中、158の国と地域のパビリオンが円の内側に共存し、「団結の象徴」という思いが共有されているためだ。リングは200メートルのみが保存される予定で、専門家は「政府や大阪府・大阪市は適切に管理し、継承していく責任がある」と指摘する。(大槻浩之、石見江莉加)
◇「解決策を」
「大阪がリングを残すための解決策を見つけてくれることを、願わずにはいられません」
万博の閉幕まで1週間を切った10月7日夜、大阪府と大阪市が参加国などを招いて市内のホテルで開いたレセプション。スイスのマヌエル・サルクリ政府代表(60)が「Save the ring!(リングを残そう!)」とスピーチすると、会場から「Save the ring!」のコールがわき起こった。
リングは9月中旬、国や大阪府などが1周約2キロのうち北東200メートルを保存することを決めた。サルクリ氏は別の食事会の場でも、リングを模したデザートの一部をカットし、「200メートルを残すだけなら、こんな見た目になる」と吉村洋文知事らに保存を訴えたという。
サルクリ氏は、一緒に音楽イベントを開くなどリングの内側で各国と連携したことを振り返り、「壊さないといけないのは、悲しい」と話す。
◇エッフェル塔は保存
リング保存への思いは、参加国の代表者でつくる運営委員会で、多くの国が賛同したという。
オランダのマーク・カウパース政府代表(58)は、1889年パリ万博で建てられ、解体予定だったエッフェル塔が保存されたことを引き合いに、「リングの一部保存は、エッフェル塔の下半分だけを残すようなものだ」と訴える。
西アフリカ・リベリアの政府代表で歌手のクイーン・ジュリ・エンディー氏は、リングの保存を呼びかける曲「Save The Ring」を作り、10月に万博会場で披露した。「リングは異なる地域や文化の私たちを一つに結びつけてくれた。万博の記憶をつなぎとめるために残したい」と語る。
◇理念国境超え共有
しかし、本来全てを解体する予定だったリングの保存には巨額の費用が必要になる。200メートルを展望台として残す場合、改修費や管理費は10年間で55億円と試算されている。財源については、運営収支の黒字分を充てることが検討されているが、決まっていない。
吉村氏は「リングを高く評価してもらっているのは率直にうれしい。でも、防腐や防水措置もしておらず、費用を全部出す人がいない限り1周残すのは難しい」と語る。
大阪府・市は、万博跡地の民間活用を計画しており、リングを全て残せば跡地活用の障壁になる可能性もある。
リングの解体作業は12月に始まり、来年11月以降に基礎や
カウパース氏は「エッフェル塔は入場料を徴収しており、リングも入場料を取って維持管理する方法を考えてみてはどうか」と提案。サルクリ氏は「日本の政治や財政に干渉してはならず、最終的には日本の決定を尊重する」と語る。
大阪公立大の橋爪紳也特別教授(都市計画)は「海外からリングを残してほしいという意見が出るのは、リングに託した万博の理念が国境を超えて共有されたと言え、喜ばしい」と指摘。「残る200メートルは、万博の記憶を伝える大事な装置になる。関係者は50年後、100年後を見据えて維持する方策を具体化するべきだ」と話した。
◆大屋根リング= 1周約2キロ、高さ最大約20メートル。建設費用は344億円。世界最大の木造建築物としてギネス世界記録に認定された。「多様でありながら、ひとつ」という万博の理念を表現している。木材の一部は、能登半島地震の復興公営住宅などに再利用される。関西大や立命館大など関西の7大学も、大部分を残すよう大阪府などに要望している。