山上被告の量刑、不遇な生い立ちの評価が焦点…安倍晋三氏と旧統一教会の関係性の捉え方がポイント

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 安倍晋三・元首相が銃撃されて死亡した事件で、殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判は21日、奈良地裁で判決が言い渡される。最大の争点は量刑で、検察側は無期懲役を求刑、弁護側は「懲役20年までにとどめるべきだ」と主張している。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に母親が多額の献金をしたことによる被告の不遇な生い立ちをどの程度考慮するかが注目される。

山上徹也被告
山上徹也被告

標的を変更

 起訴状では、山上被告は2022年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で、参院選の応援演説中の安倍氏を手製銃で撃って殺害したとしている。

 被告は昨年10月の初公判で殺人罪を認めた。計5日間行われた被告人質問では、生い立ちや事件に至る経緯を詳述した。

 被告が小学生だった1991年、母親が教団に入信。中学2年の頃、家族が多額の献金を知り、生活が一変した。反発した祖父が母親を自宅から閉め出したり、「(母親を)殺害して自分も死ぬ」と包丁を持ち出したりした。98年に祖父が亡くなった後、母親は自宅を売却してさらに献金を重ね、その総額は1億円となった。2015年、教団を恨んでいた兄が自殺した。

 被告は助けられなかった自分を責めた。だが、献金のおかげで兄は天国で幸せに暮らしていると母親が考えているように感じた。「蓄積していたものが全てその時に爆発した」。教団幹部の襲撃を決めた。

 18年に岡山県、19年に愛知県での襲撃を企てたが失敗。その後はコロナ禍で教団幹部の来日予定が決まらなかった。被告は事件前月に仕事を辞め、手製銃の製造で金を使って借金を抱えていた。事件数日前、「完全に行き詰まる前に」と、標的を安倍氏に変更した。

 被告人質問で、教団の友好団体にビデオメッセージを送るなどしていた安倍氏に「絶望と危機感」を抱いていたと明かし、「教団と政治の関わりの中心」と述べた。一方で、標的として「本筋ではない」とも語った。

「犯情」「一般情状」

 量刑は、生い立ちの評価が焦点となる。

 刑の重さは、動機や殺意の強さ、計画性などの「犯情」で大枠を決める。反省状況や遺族感情などの「一般情状」もある程度考慮されるが、量刑を大きく左右するものではない。

 複数の公判関係者によると、被告の生い立ちについて、検察側は一般情状、弁護側は犯情と捉えている。

公判の争点と主張
公判の争点と主張

 検察側は昨年12月の論告で、生い立ちの不遇さは認めつつ、成人後に自立して生活していたことなどから、「生い立ちが犯罪の意思決定に与えた影響は極めて限定的だ」と主張。安倍氏を狙った理由は経済的 逼迫ひっぱく から教団を襲撃できなくなると焦りを感じたためで、「動機は自己中心的」と批判した。母親の教団への傾倒に「安倍氏は一切無関係だ」とも強調した。

 これに対し、弁護側は最終弁論で、被告について「宗教が関わった虐待の被害者」と指摘。不遇な生い立ちを「事件の核心部分」と位置付け、「犯行と直接関係のない背景事情ととらえられるべきではない。量刑判断で最も重要視される動機に深く関わっている」と反論した。

長崎市長射殺事件の判決、被害者1人で無期懲役を選択

 判決の注目点を元東京高裁判事の朝山芳史・上智大法科大学院教授に聞いた。

 量刑の検討にあたっては、1人の命を奪った行為の責任を評価し、動機や計画性、社会的影響などの「犯情」を考慮する。犯行の準備状況や態様から、計画的で強い殺意があったと言えるだろう。

 宗教2世としての不遇な生い立ちが事件に与えた影響をどうみるかによって、量刑が大きく左右されると考えている。

 仮に被害者が教団関係者であれば、生い立ちと犯行を結びつけやすかった。だが、安倍氏は教団の問題に直接関係しているわけではない。安倍氏と教団の関係性をどう捉えるかが、犯情か一般情状かの判断を分けるポイントになる。

 選挙演説中に元首相が殺害された異例の事件で、社会に与えた影響は大きい。2007年の長崎市長射殺事件の判決では、被害者が1人で無期懲役が選択されており、今回の判決を導く上で参考となるだろう。

警備に隙「平和だなと」 山上被告 

 山上被告は被告人質問で、事件現場の警備態勢について「あまり警戒されておらず、平和だなと思った」と語った。

 被告は事件当日、午前10時頃、演説会場の近鉄大和西大寺駅前に到着。近くの商業施設のトイレで手製銃を発射できる状態にし、会場周辺をうろついていた。同11時半頃、周囲が360度開けた場所で演説していた安倍氏の後方から近づいて銃撃した。

 被告は「警備が射線をあけてくれ、犯行が可能になった」とも述べた。

 事件後に警察庁が公表した報告書によると、現場には警察官十数人が配置され、安倍氏のすぐ近くには4人がいたが、聴衆の多い前方を重視。報告書は「計画作成時、後方の危険を見落としていた」「現場の指揮官が後方の警戒の空白に気づいていれば、事件を防げた可能性が高かった」とした。

 警察庁は要人警護のあり方を定めた「警護要則」を改正。都道府県警が作成した警護計画案を警察庁が事前に審査する仕組みを導入した。

事件に至る経過と山上被告の発言
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