家賃「引き上げ」要求されたら…まず契約書確認・原則は双方合意、納得できなければ近隣の物件調べ交渉も
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マンションなどの賃貸物件の家賃が上昇傾向にある。家主から引き上げを求められた際の対応方法などをライフルホームズ総研副所長でチーフアナリストの中山登志朗さんに聞いた。(山田朋代)
――家賃はどの程度上がっているのか。
ライフルホームズの調査では、東京23区の単身向けの平均家賃は、2025年11月は11万9139円と、20年の同月比で1・3倍です。ファミリー向けでも、25年11月は5年前の1・5倍です。地域によって差はありますが、多くの地点で調査開始以来、過去最高を更新しました。
――上昇の背景は。
23年5月に新型コロナが感染症法上の「5類」に移行し、リモートワークが減って出社が増えました。利便性が高い立地への需要が高まっています。また、光熱費や人件費などの維持管理コストの上昇分をまかなうなどとして家賃の改定が行われるケースが多くなっています。
――家主はどんな場合に引き上げを求めることができるのか。
借地借家法では、当事者間の合意で決める家賃は、土地や建物にかかる税金が上がったり、物価や建物の価格が上昇したり、近隣の似たような物件に比べて不相当に低かったりした場合、増額を請求できるとしています。
――どのような手順で、家主側と交渉すればいいのか。
引き上げを求められた際には、まず、どんな賃貸契約を結んでいるのか確認しましょう。そして、家賃の増減の取り決めについて、契約書などを確認した上で、引き上げの根拠を尋ねます。納得できなければ、物件検索サイトで同じような場所の同種の物件を調べ、上げ幅が不当だと感じたら、交渉材料にします。
――家賃引き上げを了承できないなら、退去しなければならないのか。
賃貸契約で最も一般的な「普通借家契約」では、原則として双方の合意がなければ契約条件の変更はできません。住人は退去したくなければ、家主と交渉ができます。引き上げを拒否しても、従来の家賃を払い続けていれば、正当な理由なく、強制的に退去させることは法律で認められていません。
家主が家賃の受け取りを拒んだ場合は、従来の家賃を支払う意思を明確に表明するために、管轄の法務局に家賃を供託する方法や、銀行口座を作って毎月定期的に入金していることを示すことで、意思表示できます。また、所得を証明する書類で、支払い可能な額を示しながら交渉することも有効です。
――交渉で折り合わなければ調停や裁判が必要か。
交渉が長期に及ぶこともありますが、実際に調停や裁判になることはまれです。管理会社を介しての交渉が多いと思いますが、「今は難しいが、いつだったら引き上げに応じられそう」など、こちらの見通しを伝えながら冷静に交渉しましょう。
――賃貸契約の種類によって対応が異なるのか。
「定期借家契約」の場合は、契約に定められた期限が終了したら更新ができず、再契約を結ばねばなりません。家主から改めて提示された家賃などの条件を受け入れなければ再契約はできません。
――相談先はありますか。
東京都では「賃料値上げ特別相談窓口」を昨年10月に設置しました。自治体の住宅政策の担当部署のほか、自治体主催の法律無料相談などで相談するといいでしょう。
家賃引き上げを求められた際の対応例
(中山さんへの取材を基に作成)
・賃貸契約の種類や、家賃の増減の取り決めを契約書などで確認し、引き上げの根拠を聞く
・物件検索サイトで、近隣の物件の家賃などを確認し、交渉材料の一つにする
・交渉中は、家賃の支払いをやめるのではなく、従前の家賃を支払い続ける
・支払い可能額を公的な証明書などを添えて伝え、冷静に交渉する