島根県中山間地域研究センター、国際誌に論文
【島根】県中山間地域研究センター鳥獣対策科の澤田誠吾科長を中心とする研究チームの論文「ツキノワグマの栄養状態と堅果類の豊凶との関係性」が、日本哺乳類学会が発行する国際誌「Mammal Study」に掲載された。同センターが調査した熊の栄養状態指標を活用。分析の結果から「ドングリが不作の年に人里へ出没した多くの熊の栄養状態は悪くなく飢餓状態ではない」とし「生活圏への出没は果実など魅力的な食物資源が要因の可能性がある」と示した。
研究チームは16年にわたり調査した約650頭に上るツキノワグマの複数箇所の体内脂肪量の季節変動や脂肪量と秋の主要な食物であるブナ科樹木の果実の結実豊凶との関係を分析した。
脂肪量は季節によって変化し、秋期に最も多く、冬眠から夏期にかけて減少するとし、冬眠中は、皮下脂肪を使い、春から夏にかけては内臓脂肪、その後骨髄脂肪を代謝するという、3種類の脂肪を使い分けて自らの栄養状態をコントロールしていることが明らかとなった。
考察として、ドングリが不作の年に人里へ出没した多くの熊の栄養状態は悪くなく、出没の主な要因は体内の脂肪蓄積量の低下という生理的な栄養状態の悪化ではない。熊が人の生活圏内に出没するのは、人里の果実など目の前の魅力的な食物資源の存在が大きな要因である可能性が示唆されたとまとめた。
同センター鳥獣対策科の澤田科長は、「今回の結果を踏まえ、熊の人里への出没を防ぐには、放置された柿の木を取り除くなど、人が誘引物を適切に管理することの重要性が分かった。昔のように、人と熊の緊張関係を構築することが必要だ」と訴えた。
研究チームには同センター職員に加え、国立研究開発法人国立環境研究所、ノルウェーNord大学、東京農工大学大学院の研究者らが参画した。
日本哺乳類学会は、哺乳類に関する知識の進歩と普及を図ることなどを目的として活動。会員は、大学などに在籍する研究者や学生らが参加する。2022年6月末現在の会員数は1021人。団体会員は12となっている。