広島城天守の木造での復元検討、江戸末期から明治初期の姿に…市「整備効果が一番高い」
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老朽化で3月に一時閉じる広島城天守(広島市中区)などについて、木造での復元に向けた検討が進んでいる。広島市が昨年末に示した案では、工期9年で工事費は約195億円かかるという。博物館でもある天守では、閉城に向けた特別展を訪れた人らが名残を惜しんでいる。(荒川紘太)
元々の天守は1590年頃に完成したとみられ、1931年に国宝に指定。45年8月の原爆投下まで存在した。戦後、市民から再建を求める声が高まり、58年に鉄筋コンクリート造りで天守がよみがえった。
建築60年を経て老朽化が進み、2019年度の調査では、震度6強~7の地震で倒壊する恐れがあることが判明。今年3月22日に閉城することが決まった。建物は当分取り壊さず、景観を楽しめるという。
耐震性を高める改修が検討される中、木造による再建案が浮上した。20年11月、市民団体「広島城天守閣の木造復元を実現する会」が発足。翌年には、松井一実市長へ天守の木造復元を求める約2万人分の署名を提出した。
市は、明治時代の初期まで残っていた東と南の小天守(ともに3層)と、天守を結ぶ廊下なども含む建物群を一体的に木造復元することも考えながら、23年に有識者による検討会議を設置した。
市は昨年12月、検討の中間状況を発表。耐用年数の決まっているコンクリートと異なり、木造復元は定期的な修理で維持でき、教育的な価値などから「最有力」とし、小天守を含む建物群全体を、古写真などの資料が残る江戸時代末から明治初期までの姿で再建する案を「整備効果が一番高い」とした。
さらに、天守北側の堀にスロープを設けて資材を搬入する方法は安全性が高く、工事の効率化も可能で、設計に必要な時間なども含め、天守の完成は最短で49年度としている。
市民団体の大橋啓一会長(79)は「天守がない期間が長引くと、観光客を逃し、市民の愛着も薄れてしまう。一年でも早く実現してほしい」と訴える。市文化振興課の深野智司・広島城活性化担当課長は「天守群全体を復元することで、当時先進的だった建築の姿を示すことができる。実現可能性を高めるため、調査や財源確保を進めたい」としている。
戦前の姿、時を超え…写真や資料展示
閉城へのカウントダウン企画展「広島城天守 時代を超えて語り継がれる物語」(3月22日まで)は、4階の企画展示室を会場に、戦前の天守などの写真約70点、絵はがきなどの実物資料約20点を展示している。
昭和初期には天守の前で記念撮影をする人が多くいたことや、1951年から約1年間、体育文化博覧会の展示会場として木造の仮設天守が造られ、周辺にはジェットコースターのような施設があったことなどを紹介。今の天守は最上層だけ木造であることや、戦後には石垣の上に米国の「自由の女神」を模した像を設置すべきだとする意見があったことも伝えている。
初めて旅行で訪れた神奈川県小田原市の男性(69)は「倒壊した天守の写真から原爆の威力がよくわかり、閉城前に来ることができて良かった。木造での復元は趣ある建物ができるので、良い取り組みだと思う」と話した。
午前9時開館。閉館は2月までは午後5時、3月は平日午後6時、土・日と祝日は午後7時。入場料は大人370円、高校生と65歳以上が180円、中学生以下無料。