「今度は絶対」好きな場所・時間に星降らす<人工流れ星プロジェクト>母が率いる宇宙ベンチャー…流星の核は、人工衛星から発射する金属球
完了しました
人工流れ星計画に挑む 岡島礼奈さん
吸い込まれそうな夜空が眼前に広がる。
現れたのはひとかけらの光。
社長を務める宇宙ベンチャー「ALE」(東京)の人工流れ星プロジェクト。「人工流れ星で同じ瞬間を共有できたら。想像するだけでワクワクする」。目の輝きは星にも負けない。
大学進学まで鳥取で過ごした。バッタを捕まえてはじっと見つめる日々。「自然ってなんて不思議なんだろう」。膨らむ好奇心。「学べば学ぶだけ、世界の解像度が上がっていく」
東大に進学し、博士課程に進んだ。周りは寝ても覚めても研究のことを考えている才能ある人たちばかり。あこがれた天文学者は簡単でないと悟った。
ただ、構想が生まれたのはこの頃だ。千葉で見たしし座流星群。美しさに息をのんだ。「人工的に星を流せたら」。今に至る導火線に着火した瞬間だった。
卒業後に就職した外資系投資銀行では、感情を排し合理的に考えることをたたき込まれた。でも、「面白そう」と思えば、動かずにはいられない。やがて、リーマン・ショックのあおりで退職。2011年にALEを設立した。
直径1センチほどの金属球を人工衛星から発射し、好きな場所、時間に流れ星を出現させる。オーストラリア上空から水平に打てば、瀬戸内の上空60~80キロ、直径200キロ圏内で流れ星が見られるはずだ。構想に賛同したファミリーマートからは関連商品を開発するとの申し出があり、日本航空は上空で観賞できるチャーター便運航を検討した。
起業と同時期に授かった男児2人の子育てと資金調達を進め、19年、金属球を載せた人工衛星を打ち上げた。
「球放出」の合図の後、いくら待っても流れない。手違い? 何度かやれば動く? 必死に考えた。確認すると球を送る装置の部品一つが動いていなかった。4か月後、「失敗」と結論づけた。
「必死すぎて何がどうなっていたのか覚えていない」。周囲からは「表情がなかった」と言われた。
「流れていたらどうなっていただろう。楽しかっただろうな」。今も頭をよぎる。それでも前を向く。「あのとき流れなかったからこそ、こんなに面白いことがあったと思える日がくると信じているから」
技術部門の責任者、石井宏宗さん(37)は「小学生みたいな人」と笑う。突っ走った先はしんどい、とわかっていても、面白いと思えば走らずにいられない。会議で興味のままに話がそれてもそのまま走らせる。「無関係だと思えることでも、想像を超える発見を提供してくれる。大変ですけどね」
次こそは。コロナ禍で難航した資金集めもめどがたった。「今度は絶対できると信じている」。今年、プロジェクトのスケジュールを発表する。
「好奇心の前には、物理法則を除いて、男女の差も制度も、お金だって制限にならない」。瞳は輝き続ける。(林美佑)