広島カープに心奪われ「Cターン」、住んでからは胃袋つかまれて…ヤクルトファンに囲まれて育った東京の女性の移住経験と願い
完了しました
広島市中区のフランス料理店「ビストロ アブリル」。木佐明弘さん(52)が営み、妻の真弓さん(45)が手伝う店には、広島東洋カープの大エースだった黒田博樹さん(50)のボブルヘッド人形など、いかにも「
実家は東京ヤクルトスワローズの本拠地・明治神宮野球場に近く、父はヤクルトファン。野球観戦は身近だったが、カープのことは全然知らなかった。
それが16歳の時に一変した。友人に誘われ、神宮の左翼席でカープ戦を見て、初めて「スクワット応援」を体験。応援歌に合わせて立ったり、座ったりして選手名を叫ぶ。一体感に包まれ心を奪われた。関東を中心にカープ戦へ通い、神宮球場では「稼ぎながらカープを感じられる」とビールの売り子に。カープは生活の一部となった。
「もっと近くでカープを応援したい」。思いは募り2016年秋、広島市内へ引っ越した。折しも、黒田さんや現役の新井貴浩監督(48)がチームを引っ張り、25年ぶりにリーグを制覇。優勝パレードで赤く染まった沿道を見て、「移住を祝福されている気分になった」。
市内の人材派遣会社に勤め、仕事を終えるとマツダスタジアム(広島市南区)へ。試合後の飲み会で、常連客として通う「ビストロ――」の明弘さんと仲良くなった。「廿日市市出身の夫は釣りも趣味。魚料理も振る舞ってくれて胃袋をつかまれた」と真弓さん。21年に晴れて結婚。広島は家族と生きる場所になり、昨年10月に会社を辞めた。
幸せな日々だからこそ、県の課題である人口流出問題が気になる。会社員時代、ひろぎんホールディングスとマツダ、中国電力の3社を中心に人材確保を目指す企業ネットワーク「HATAful(はたフル)」のメンバーとして、この問題を議論した。今後、人脈やCターンの経験を生かし、移り住む人を増やす試みに協力したい。
広島の魅力は、自然や食など数多いが、やはりカープを始めとする地元プロスポーツを挙げる。人間関係が希薄だという今の時代。「地域の一体感を生み出せるコンテンツの力は大きい」と思う。
「厳しい状況を乗り越える力は、カープにも、そしてこの県にもあるはず。それこそ『鯉の滝登り』のように」と真弓さん。街が、通りが赤く染まる日を心待ちにしている。(岡本与志紀)