スポーツ愛あふれる、広島っていい所…近賀ゆかりさん
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女子サッカー界の「レジェンド」と呼ばれた近賀ゆかりさん(41)は、現役を引退した今もよく、サンフレッチェ広島レジーナの本拠地「エディオンピースウイング広島(Eピース)」(広島市中区)を訪れる。昨年12月、隣接する広場で3匹の愛犬とじゃれ合い、一緒に芝生の上を駆ける姿があった。「街中でサッカーを感じながら、ゆっくりできる特別な場所」。柔和な笑みを浮かべ、そう語った。
神奈川県出身。小学生でサッカーを始め、同県の高校を経て、日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)に入った。豊富なスタミナとスピードを武器に日本代表(なでしこジャパン)でも活躍。2011年ワールドカップドイツ大会での優勝に貢献し、国民栄誉賞も贈られた。
国内外のクラブを渡り歩いてきた。神戸市を拠点とするINAC神戸レオネッサ、イングランドの強豪アーセナル、豪州のキャンベラ・ユナイテッド……。ベテランと呼ばれる年代となった2021年、日本初のサッカー女子プロリーグ「WEリーグ」が発足した。
複数のクラブからオファーが届く中、最も魅力を感じたのがレジーナだった。「女子サッカーへの熱意、自分をどれだけ必要としているかが伝わった」。それまで広島との縁は薄く、「国民栄誉賞の副賞で熊野筆をもらったくらい」だったが、「挑戦する価値がある」と決断した。
加入後、強く感じたことがある。「広島にはチームを育てようという『推し活』文化が根付いている」。子どもも大人も、応援するチームのユニホームを着て街中を歩き、試合結果を議論し合う。原爆復興のシンボルとして誕生した広島東洋カープをはじめ、バスケットボール、バレーボールなど数多くのチームを持つ県民の熱気に驚いた。「ほかの地域にはないこと。海外の都市に近い雰囲気で、本当にスポーツの街だと思った」
初代主将としてクラブを引っ張り、25年5月に引退。現在はアンバサダーとしてレジーナに関わる。日本サッカー協会などの仕事もあるが、生活拠点は広島のまま。「レジーナのため、まだやることがある」と力を込める。
県内の高校女子サッカー部での指導や女子大での講演など多忙な日々の合間を縫い、長年連れ添ってきた女性パートナーと食事に行き、愛犬と散歩する。街中を歩き、地元の人たちが営むお好み焼き屋がいくつもあることに驚いた。「大阪でも、こんなにたくさんのお店はないはず。味もそれぞれに違う」。広島での何げない時間、発見が、かけがえのないものになっている。
「食べ物やスポーツなど、ここに住む人たちは広島の文化を本当に大事にしている。サッカーを通して、もっと広島の良さを発信していけたらいいな」。大好きな街に住む幸せをかみしめながら、そんなことを考えている。(高田果歩)