懐かしの味 娘に継ぐ 洋食店「一新亭」秋山さん 建て替え機に 万感の最終日
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創業119年の老舗洋食店「一新亭」(台東区浅草橋)で60年以上、腕を振るってきた秋山武雄さん(88)が、店舗建て替えに合わせて第一線を退く。「多くの人たちに支えられて今までやってこられた」。工事前、最後の営業となった27日も万感の思いで店に立ち、変わらない味を提供した。来年秋に新装開店し、娘2人に味を引き継いでいく。(大塚美智子)
「もう88歳だから体力が落ちてきたけど、最後までお客さんのためにおいしい料理を届けますよ」。27日午後1時頃、年季の入った調理場でフライパンを手にした秋山さんは、矢継ぎ早に入る注文を手際良くさばいていった。休業を惜しむ大勢の常連客が駆けつけ、この日は通常より多い約50食を振る舞った。
10年以上通う文京区のオペラ歌手都留俊輔さん(67)は「最後の日なので秋山さんに会いたくて来た。どの料理も懐かしさを感じる優しい味わいで、安心する」と話した。
■■地域に愛され119
年 一新亭は1906年に秋山さんの祖父が台東区鳥越で洋食の出前専門店として開業。関東大震災を機に、現在の浅草橋に移転した。ハヤシライスとカレーライス、オムライスを一度に楽しめる「三色ライス」が人気で、地域の人たちに長く愛されてきた。
秋山さんが店を手伝うようになったのは53年の高校1年の時。店の金が従業員らに盗まれ、先代の父から「外の人間は信用できない。高校を辞めて手伝ってくれ」と頼まれたという。
62年に父が病気で亡くなり、25歳で3代目店主となった。それまで仕込みの手伝いばかりで包丁を触らせてもらえず、肉の切り方もわからなかったが、生前の父の仕事ぶりを思い起こし、店の味を大切に守ってきた。
■■店内に下町の写真
写真家としても知られ、店の仕事の合間を縫って東京の下町を撮影し続けてきた。撮りためた写真を店内に飾り、2011年からは読売新聞都民版で「懐かし写真館」を連載している。
建て替え工事は来年秋に終わる予定で、4代目となる長女(58)と次女(57)に調理法などを引き継ぐ。
この日の営業を終えた秋山さんは、「色々なことを思い出しながら無我夢中で調理をした。新店舗でもこの味を引き継いで、訪れてくれる人を喜ばせたい」と話した。