公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

織田邦男

【第1324回】迅速な抗議と公表が中国軍を抑止する

織田邦男 / 2025.12.15 (月)


国基研企画委員・麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男

 

 12月6日、沖縄本島南東の公海上で中国海軍の空母「遼寧」から発艦したJ15戦闘機が、対領空侵犯措置(領空に接近・侵入する外国機に対する措置)を実施中の航空自衛隊F15戦闘機に対し、レーダー照射を行った。そのうちの1回は、約30分にわたる照射であり、明らかな威嚇、挑発行為と言える。 
 艦艇の場合、捜索レーダーと火器管制レーダーの2基を装備しているが、戦闘機の場合、1基のレーダーを捜索モードと火器管制モードを切り替えて運用する。火器管制モードは武器使用のためだけでなく、他機の情報(高度、速度、方位)を得るために、数秒間使用することはある。だが、約30分にわたり使用し続けるというのは、言わばこめかみに銃口を突き付け、引き金に指を当てている状態と言え、極めて危険である。普通の空軍であれば正当防衛で反撃することもある戦闘行為といえる。

 ●的外れな中国の主張
 中国外務省報道官は「訓練区域に勝手に入ってきて訓練を妨害した」と抗議しているが、事前に訓練区域をノータム(NOTAM=Notice to Airmenの略で、航空安全に関わる情報を関係者へ通知する国際システム)で通知もしておらず、抗議は的外れである。訓練開始の通知は海自艦艇が受領しているが、あくまで「訓練開始」についてであり、訓練区域が不明であれば対応しようがない。
 事案の発生場所は我が国の防空識別圏(ADIZ)内である。ADIZ内であっても公海上空の飛行の自由は国際法で担保されており、演習も自由に実施できる。だが、今回のように領空に近いところで演習を実施する場合、当然、空自が戦闘機をスクランブル(緊急発進)させて警戒に当たるのは中国側も承知のはずである。だからこそ、ノータムで訓練区域、使用時間帯などを事前通知して不測事態を防止するのが国際慣例である。今回の事案をみると、中国は国際慣例を知らないか、あるいは国際慣例を守る意思がないかのどちらかだろう。

 ●小笠原諸島にも防空識別圏を
 こうした中国軍の不法ともいえる行為には、素早く抗議し、国際社会に公表することが再発防止につながる。今回、防衛省は事案発生から約6時間という至短時間で防衛大臣が記者会見で公表した。2013年の中国艦艇レーダー照射事件が公表までに6日間かかったのと比較すると格段の進歩がみられる。
 今後、第1列島線(南西諸島~台湾~フィリピン)を超えた中国海軍の活動が常態化するであろう。日本の防空網は旧ソ連を主な脅威とした冷戦対応のままであり、太平洋側に弱点がある。早急に硫黄島を作戦基地として整備し、同島を含む小笠原諸島にもADIZを設定し、太平洋側の防空網構築を急ぐべきである。(了)

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