台湾 忍び寄る選挙介入 中国の工作警戒 AI駆使し情報誘導
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2026年に統一地方選、28年に総統選を控える台湾の
米国のバンダービルト大国家安全研究所は今年、北京を拠点とする大手「中科天璣」社の内部資料とする文書を入手し、サイト上に公開した。文書は約400ページに及ぶ発表用資料作成ソフトのファイル。「香港、台湾、米中問題など共産党中央の関心に対応し、情勢を感知、分析し、世論を誘導する技術を提供している」と説明している。
文書によると、同社のシステムはまずネット空間を監視し、世論に影響力を持つ人物に狙いを定める。対象人物の心理傾向や価値観、方言を含む使用言語などを解析し、波長が合いそうな虚偽の人物をAIで生成する。
この虚偽の人物は、SNSに作られたアカウントのユーザーとして、情報を一方的に提供するだけでなく、自然な対話もこなしつつ、対象の人物に影響を及ぼしていくとみられる。台湾のAI業界団体関係者は「生成AI技術の進展で、SNS上の虚偽人物の真偽を見分けることはほぼ不可能となりつつある」と語る。
中科天璣は、文書の内容を報じた米紙ニューヨーク・タイムズに対し、報道内容を否定している。
中国の
台湾で対中政策を担う大陸委員会が12月1日に開催した諮問委員会では、中国の世論戦に対する強い警戒心が示された。ネット上に散布される偽情報への対応強化や住民への教育徹底を求める意見が上がった。
世論操作の疑念 過去にも
台湾では選挙のたびに、中国の介入が取り沙汰されてきた。2018年11月、中国に融和的な国民党の韓国瑜氏(現・立法院長)が当選した高雄市長選でも、中国軍の関係機関が世論操作などで介入していた可能性が指摘されている。
今年10月、男性2人の会話を録音した3本の音声ファイルがインターネット上に流出した。分析した安全保障関係当局者は、18年の高雄市長選前に、中国軍の戦略支援部隊傘下だった「第56研究所」の処長と、北京を拠点とする情報分析企業の責任者が交わした会話だと推定している。
処長とみられる人物は「この選挙は非常に重要だ。(韓氏は)当選できないと言われているが、最後には当選する」と述べた。これに対し、企業責任者とみられる人物は「我々の『データ量』は増えており、台湾のフェイスブックのアカウントは580万~600万ある。1000万まで増やす」と話した。
会話では、選挙介入に関する直接的な言及はない。だが、この当局者は、処長が軍として韓氏を当選させるための介入を主導する意向を示し、企業に協力を求めたとみている。会話の中には、処長とみられる人物が、高雄市長選を含む18年の統一地方選と20年の総統選の工作資金として計2000万元(約4億4000万円)を用意することを示唆する発言もあった。
高雄市長のポストは18年までの約20年間、民進党が維持してきたが、韓氏が前評判を覆して当選した。当時、韓氏に関する検索数が飛躍的に増加するなど、ネット上での世論操作を疑う指摘も出ていた。
◆戦略支援部隊= 習近平政権が2016年初めに公表した軍の機構改革に伴い、サイバーや宇宙分野を担う部門として発足。傘下の第56研究所は軍最大規模の計算機研究所で、情報セキュリティーなどを取り扱うとされる。24年の組織改編で戦略支援部隊は廃止され、これに伴い発足したサイバー空間部隊の傘下に、同研究所は組み込まれた。