インフルエンザの高熱で寝込んだ息子は、突然窓に向かい…子どもに起きる<熱せん妄>どうする?予防や対策を専門家に聞く

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 インフルエンザで高熱を出した子どもが突然、意味の通らないことを言い出し、暴れ出した――。急激に発熱した子どもに起こる「 ねつ せん もう 」と呼ばれる意識障害に、肝を冷やした保護者もいるのではないだろうか。異常行動によるけがや深刻な合併症から子どもを守るために、どう対応すればいいのか。専門家は特に<発熱後2日間>の注意が必要と指摘する。(大阪デジタル編集部 川崎陽子)

子どもの高熱時の異常行動の例
子どもの高熱時の異常行動の例

 「怖い怖い」

 2年前の12月。名古屋市の40歳代の母親は、3階建て住宅で寝ていた当時小学2年の次男が突然おびえ出し、部屋の外に飛び出す姿を目の当たりにした。次男がインフルエンザで40度超の熱が出てから2日目。自分と夫を踏み越え、廊下の窓を開けようとしたところを二人がかりで押さえたという。一瞬の出来事だった。

 次男はその後もタンスに向かって意味が通らないことを約10分話し続けた。それからも高熱を出すたびにベッドの上で跳ねたり、怖いものが見えると怯えたりしたという。

 母親は「子どもが熱を出すと不安で眠れない」といい、「一人で看病する時は、私が階下のトイレに行く時も息子を連れて行く。高熱の子どもを絶対に一人にしてはいけない」と語る。

■インフルで熱せん妄、子どもの転落事故も

 今年もインフルエンザの流行が拡大している。厚生労働省によると、感染者数(12日発表)は、41府県で警報レベルに達した。入院患者(11月3日以降)は計9924人に上り、熱せん妄の危険性が高い14歳以下の小児は4724人と47%を占める。

 「熱せん妄」による搬送も相次いでおり、11月には東京都で母親の外出中に、小学1年の男児がマンション4階のベランダ柵を乗り越えたとみられる転落事故も起きている。

 「けいれんは知っていたけど、熱せん妄の情報はあまり聞いたことがない」と感じる人も少なくないだろう。そんな不安に応じようと、東京都のイラストレーターめんたまんたさん(37)は投稿サイト「note」で自らの体験を発信している。

 昨年6月に長男(当時6歳)が熱せん妄になり、幻聴などが起こった様子のイラストも描いた。「それまで聞いたことがなく、『熱でどうかしてしまったのか』とびっくりした」と振り返る。

徘徊するような様子を見せた長男を描いたイラスト=めんたまんたさん提供
徘徊するような様子を見せた長男を描いたイラスト=めんたまんたさん提供

 記者の子どもも、保育園の時にインフルエンザを発症し、窓から転落してけがをしそうになったことがある。インフルエンザ脳症を疑われ入院したが、子どもには当時の記憶がないという。「目を離してはいけない」という忠告は身にしみる。

 めんたまんたさんのサイトでは、当時、子どもが発した言葉や行動もつづっており、普段と違う様子や親の声のかけ方がわかる。

 インフルエンザにかかった後、患者が突然、部屋や窓から出ようとするといった異常行動はかつて、抗インフル薬・タミフル服用との関連が指摘されていた。だが今は、タミフル服用の有無にかかわらず、▽就学以降の小児や未成年者の男性で報告が多い▽発熱から2日間以内の発現が多い――と厚労省がまとめている。

 厚労省は「発熱時は異常行動に備えた対策を徹底してほしい」と啓発。普段から緊急時の対応を意識しておくことも重要だ。

いざという時にどうすれば…専門家に聞く

 症状の重い患者が搬送される大阪市立総合医療センター小児救急・感染症内科の天羽清子部長に「熱せん妄」や対策について話を聞いた。

「いつもの様子と違うこと自体がサイン。救急車を呼んでいい」と話す天羽部長
「いつもの様子と違うこと自体がサイン。救急車を呼んでいい」と話す天羽部長

――熱せん妄とは。

 高熱のため脳機能が一時的に乱れることでおこる意識障害です。原因はインフルエンザに限りません。1~4歳に多いですが、10歳代前半もいます。周りには見えないものが見える、何かを怖がる、変なこという――などの意識が混濁した言動のほか、異常行動による外傷で搬送される例もあります。発生頻度の男女差は感じません。

 当院でも11月初めから増え始め、熱せん妄は3人、脳症で6件搬送されました。

――インフルエンザ脳症との違いや、医療機関にかかるべき状況とは。

 脳症は、けいれんや意識障害で始まり、後遺症を残したり、重症な場合は命にかかわったりすることもあります。どちらも意識障害がありますが、熱せん妄が数分から数十分で元に戻るのに対して、脳症は戻りません。脳の様子を把握するMRI(磁気共鳴画像装置)や髄液検査で判別しますので、けいれんが数分で収まらない場合や、意識障害が1時間以上続く場合、迷わず救急車を呼んでください。必ず医療機関を受診してください。

――看病時の注意は。

 発熱初日と2日目は特に注意してください。突発的な行動に対応できるよう、10歳代前半までは誰か同じ部屋で寝て、見守ってほしいです。急に部屋から飛び出すこともあり、大事に至る前に察知できるようにしてください。

 一軒家なら1階に寝かせます。大きい子は鍵も自分で開けられるので、雨戸を閉めるなど、窓を開けてすぐ外に出られないようハードルを設けてください。

「発熱から2日間は要注意!」と呼びかける厚労省の啓発資料
「発熱から2日間は要注意!」と呼びかける厚労省の啓発資料

――同室で見守る保護者の対策は。

 インフルエンザはウイルスを含んだ 飛沫ひまつ でうつります。コロナ禍で身につけた<マスク着用・手洗い徹底>を思い出しましょう。感染者にご飯を食べさせるなど1メートル以内で飛沫を吸う可能性がある時は、保護者がマスクをしましょう。手についた飛沫を口に入れないために、こまめに手洗いもします。特に小さなお子さんはマスクを着けられないので、換気も時々した方がいいでしょう。

 流行が始まる前にワクチンを接種することををお勧めします。例年、年末から年明けにA型が流行し、その後B型が流行します。今シーズンはA型の流行が早く始まり落ち着きつつありますが、今後のB型に備えたワクチン接種も検討してください。

 先シーズンより、鼻にスプレーするタイプの弱毒生インフルエンザワクチンが2~19歳未満で使えるようになりました。痛い注射が嫌いなお子さんにも、より接種しやすくなっています。

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