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入浴の文化、違って当然
ロッカーに私物を預け、利用前に軽く汚れを落とせとの注意書きに従って、ガラス張りのシャワーブースで体を洗う。頭や手足など適当に撫でるが、黒い水着に付着したシャンプーの泡を流しながら、脳内に「?」が浮かぶ。ここは全裸で全身ゴシゴシやるべきだったのか。でも更衣室から丸見えだもんな。この場のフツウが全然わからない。
ジェットバスの水温も、案の定「?」である。温水プール程度のヌルさで、長風呂したら逆に身体が冷えそうだ。でもこれが欧米のフツウなんだよな、とガッカリしながら、ハマムに
私と同じ使い捨てのワンピース水着から両肩を抜いて、へそのあたりまでズリ下ろしてしまっているのだ。年齢は30代くらいだろうか、太い眉毛に豊かなブルネット、肌色は透けるように白い。おっぱいも豊かで、ひときわ白い。いや、いかんいかん、凝視してはいけない。
モザイクタイル張りのハマム内は、床も座面もヒーターで温められ、低い天井からは熱い水滴がしたたる。足元からは定期的にアツアツのミストが噴き出し、その一瞬は視界がホワイトアウトして息が苦しくなるほどだ。バスタオルを敷いた座面に寝そべること、五分、十分。身体の内側までじんわり熱が届き、乾ききっていた全身がふやけて、老廃物が皮ごとめくれそうな心地よさだ。これは満足度が高い。
そりゃあ水着もめくって脱ぎたくなるよなぁ、とぼんやり考える。けれど不思議なもので、ひとたび水着姿で入った場所でその水着を脱ぐという行為は、私にとってはフツウでなく、なんだかものすごく恥ずかしい。日本では何十年もの間、丸裸で公衆浴場をうろついてきたのに、それとこれとは話が別、と感じるのだから面白い。
見ず知らずの女二人、それぞれたまに立ち上がってハマムを出ては、水風呂代わりのジェットバスで涼む。私が湯槽でボコボコ揺られている間、彼女は隅のデッキチェアで休み続けている。私が立ち去るとおもむろにバスローブを解き、入れ違いで湯に入る。八角形のバスタブは複数名でも混浴できる広さだが、お湯には一人で入りたい、それが彼女のフツウなのだろう。
洞窟のようなハマムの内部は薄暗いが、ジェットバスの部屋は派手な照明が眩しい。私にとっては同じ風呂でも、彼女にとっては明るくて、見ず知らずの相手と一緒だと恥ずかしいのかもしれない。別々の文化で育ったのだから、細かな流儀は違っていて当然だ。会話はなく、無言の笑顔で譲り合う。
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